人が一生の間に打つ心拍数は「23億回」といわれる。体重や身長のみならず、食事の回数、睡眠時間、歩く速度といった、みんなが当たり前のように行っていることにも、それぞれ「数値」が潜んでいる。
「健康にいい」と信じてきた食事や生活習慣も、数字にしてみると、本当に正しいのか間違っているのかはっきりすることも多い。世界の最新の研究結果と比較してみると、あなたの健康の現在地が見えてくる──。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本中で外出の自粛が呼びかけられている。そこで気になるのが「運動不足」だ。フランスでは目下、外出証明書を所持した上で、運動は自宅1km範囲内にて、1時間までと定められている。
もし、日本でも同様の状況になったら、「歩く」か「走る」か、どうするべきだろうか。秋津医院院長の秋津壽男さんが解説する。
「日本では1日1万歩が望ましいとされていますが、年齢を重ねると膝への負担になる。長生きのためには1日7000~8000歩が理想とされています。適度な有酸素運動になるため、がんや心筋梗塞、脳梗塞の発生リスクを下げるといわれています」
7000歩なら、ちょうど1時間で歩ける歩数だ。しかし、同じ有酸素運動ならば、1時間のランニングの方が、より効果的ではないだろうか。
「若い人ならいいですが、高齢になるほど、ランニングは『有酸素』を超えて『無酸素』に近くなります。無理して走るより、歩く方が効果的です」(秋津さん)
激しいランニングが健康に及ぼす悪影響は、世界中で指摘されている。一方、「早歩き」は寿命を延ばすという報告もある。
「人が1時間に歩ける平均距離は4kmといわれています。のんびり歩くより、しゃきしゃき歩いた方が体に負荷がかかるので、運動としては効果的。若い人であれば時速4.8km程度を目指すといいでしょう。高齢の人は、いつもの散歩に一定時間だけ早歩きを取り入れるなど、負荷がかかりすぎない程度に行ってください」(秋津さん)
せっかくの運動も、「がんばりすぎ」は逆効果になるリスクがある。継続的に続けられる運動が長生きには不可欠だ。
体力に不安を感じたなら、握力を測定するといい。