高齢者の健康的な生活のため“外へ出よう”“人と交流しよう”というスローガンは一転、新型コロナウイルス対策としていまはどちらもNG。筋力低下はもちろん、気力や意欲の衰えも心配だ。
一日も早いウイルス騒動収束を祈り、その日まで元気をつなげる体操を紹介したい。全国3万人以上の高齢者と体操をしているごぼう先生こと簗瀬寛さんに、幼児から高齢者までが一緒に楽しめるいすに座って行う体操を教わった。
「原点に立ち返れば、体を動かすだけでとても気持ちがいいのです。動かずに淀んでいた血行がよくなり体の中も動き出すし、外に出て行けば景色が変わって心も動き出す。いまはなかなか外には出られませんが、家の中で体を動かし、元気を維持しましょう」と、簗瀬さん。自身の4才と1才の子供たちがはしゃいで転げ回ったり、流れる音楽に体を揺らしたりする姿を見て、あらためて感じるという。
高齢になると心身にさまざまな不自由が生じ、動かすのも億劫になりがちだが、簗瀬さんがリードして体を動かす講演会はいつも大賑わいだ。
「動き始めると、気持ちよさに気づく…というより、思い出されるのです。そしてどんどん楽しくなってくる。これは子供も大人も高齢者も同じ。まずはこれに気づいて、いかに楽しく体操を続けてもらえるか、工夫を重ねています」
ごぼう先生の体操の特徴の1つは“いすに座ったまま”行うこと。高齢者向けに、転倒リスクを避ける意味もあるが、実はそれだけではない。
「座ると安定するので、かえって動きのバリエーションは多い。高齢者もしっかり動けます。いま200通り以上の体操を考案しています」
◆正しさより楽しさを 生活動作も意識して
学生時代、簗瀬さんはボクシングで国体やインターハイにも出場。でもその経験は高齢者の健康を支える立場になったいま、反省材料として役立っているという。
「アスリートは筋肉を鍛えるべく正しい動きにこだわり、最大限の効果を目標にします。 なんとなく体操や運動全般がそんな志向で捉えられ、正しい動かし方、効果が得られる回数、運動量が求められる。
でも多くの高齢のみなさんの目標は、日常生活を生き生きと元気に過ごすことです。体を動かして気持ちがワクワクすることがまず大事。筋力は後からついてきます。だからごぼう先生の体操は“○回を○セットやりなさい”とは言いません(笑い)」
さらに“うまくできない”ことも、高齢者には楽しさにつながると言う。