お笑いコンビ・スリムクラブの名がお茶の間に浸透したのは、漫才頂上決戦「M-1グランプリ」で準優勝した2010年だろう。だが、真栄田賢(44歳)と内間政成(43歳)の2人はその前に沖縄で活動し、上京後には『エンタの神様』に出演して“プチブレイク”を果たしていた。スリムクラブの沖縄時代を知る先輩芸人の評価と、2人が語る『エンタの神様』の舞台裏とは――ノンフィクションライターの中村計氏がレポートする(全5回連載/第3回)。
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内間が東京へ行ってから約3年――。今度は、真栄田が東京行きを決断する。きっかけは、やはり沖縄の芸能プロダクション「オリジン」から東京進出を果たし、そこそこの成功を収めていた同世代の漫才コンビ・キャン×キャンの存在だった。漫画『サザエさん』の登場人物、マスオさんが「えーっ!」と驚くときのリアクションを漫才の中に取り込むネタで知られ、沖縄らしいほのぼのとした笑いが売りのコンビだった。
「キャン×キャンが通じるなら、おれの方がおもしろいっていうのがあった。なので、今の自分があるのはキャン×キャンのお陰と言っていいかもしれない」
この血気盛んなところが、いかにも真栄田らしい。
ただ、東京で活動するには、オリジンを辞め、また自分で事務所を探さなければならない。真栄田は、手始めに内間に電話をかけた。すると、内間は自分とコンビを組まないかと提案してきた。そうすれば、吉本に入れると言うのだ。真栄田はひとまずその提案に乗っかることにした。
「内間のことは友達としては好きだけど、芸人としては頼りないと思っていた。なので、彼には悪いけど、コンビを組むことを了承したのは、事務所に入るためのきっかけに過ぎなかった。あと、偉そうな言い方だけど、おれが鍛えて、おれ仕様にしてしまえばいいんだとも思っていたんです」