体験取材などでおなじみの女性セブンの名物記者、“オバ記者”こと野原広子が、世の中で話題になっている出来事に、ゆる~くツッコミを入れる。今回のテーマは「アベノマスク発動! でも、その効果は……」だ。
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「一世帯2枚ずつ配るって?」、「うち、3世代6人家族なんだけど」──。3月31日、安倍晋三首相が出した通達に、私の周囲はざわついている。「冗談だよね」と笑い出す人すらいた。
新型コロナウイルスによる休業補償等で、国民に“条件付きで”現金を支給する国もある。ドイツは60万円、アメリカは大人1人13万円、香港は1人14万円…それに比べると、一世帯にマスク2枚とは。いや、お金は後で出すのかもしれないけど、それにしても2枚って何? この非常時にこの総理、大丈夫か?
一昨年の秋から、議員会館でアルバイトをしている私。会えば立ち話をする仲の議員秘書がいるんだけど、3月半ばからの話題は「国会議員はなぜマスクをしないのか」ってこと。大きな本会議場ならまだしも、狭い委員会室でツバ飛ばして激論を交わしているときに、与野党ともにノーマスクって、この人ら、何考えてんの!? って不思議で仕方がなかったわ。この遅れが大事に至らなければ、とずっと祈っていたわよ。
それはともかく、今回ほどSNSから目が離せなかったことはない。「感染爆発の重大局面」「今週末、不要不急の外出は控えていただきたい」、小池百合子都知事が緊急記者会見でこう言った3月末の週末のこと。
医療関係の友達から、「4月1日ロックダウン発表確定。大手会社にはすでに連絡が入っています」とLINEが入ったんだわ。「そうなる前に食料の備蓄をしておくことをおすすめします」と。念のため新聞やテレビを見ても、そんなのどこにも出ていない。
そうしている間にも、「3月31日の夜、発表。4月2日から都市封鎖」とか、「株価の影響を考え、3月末、東京市場が閉まったタイミングで発表」と友人、知人が続々と知らせてきたの。
「元都議会議員の××さんから聞いた」とか、「大手企業には内々ですでに通達済みだって」とか、いかにもそれらしいんだけど、よく見ればことごとく怪しい伝聞調。不安さゆえついつい信じそうになって、8時間ほどパソコンの前でメールチェックを続けちゃったわよ。
結局、菅義偉官房長官が「明確に否定します」と答えて幕引きになったんだけど、それでも、「ホントかもしれない」と思っていた人がたくさんいたと思う。日に日に感染者が増えていき、“その段階”は近々来る、と多くの人が思っていたと思う。
私が恐ろしいなと思うのは、いまも「新型コロナ、騒ぎすぎ」と言っている人たちのこと。“正常性バイアス”っていうんだってね。非日常なことが目の前で起こると、人間は「大したことない」と自分に言い聞かせて落ち着かせようとする。そして、動けなくなるんだって。東日本大震災のときの私がそう。揺られながら友達に「すごいね~」なんてのんきなメールを送っていたのは、怖くて怖くてたまらなかったから。それを認められたのは、ずっと後になってからだった。
今回も、「テレビは見ない方がいい。脅かされるだけだから」とか「この騒ぎで誰が儲かるか、よく見た方がいいよ」とか言ってる人がいる。本人は“泰然自若”を気取っているつもりだから困っちゃう。そんな人たちも志村けんさんの死で笑っていられなくなった。「おれは大丈夫」という根拠のない自信を持てなくなったとそう思っていたら、永田町というところは違うんだね。たとえ政府が緊急事態宣言を発令しても、6月半ばまでの通常国会は休会しない方針なんだって。
新型コロナウイルスで生活が困窮する国民にいくらお金を出すのか、小池都知事が「出入りを控えて」と名差ししたナイトクラブなどの補償はどうするのか、決めなくちゃならないことは山ほどあるのはわかるけど、国会議員のすぐ後ろには秘書がいて、衆参合わせて約500人の衛視さんがいて、霞が関の役人がいる。国が推奨しているテレワークで本会議をするわけにはいかないの!?
※女性セブン2020年4月23日号