いまや60~64歳の女性の就業率は約57%に達している。「会社に厚生年金に入るように言われた。嫌なら勤務時間を減らして収入を下げなければならないらしい。どうしよう」。パート勤めの妻からそんな相談を受けたら、何と答えればいいだろうか。
厚生年金の加入条件はこの数年でどんどん拡大され、新制度では、パート(3号被保険者)の多くが加入しなければならなくなる見通しだ。
夫の扶養家族として残れば妻は年金と健康保険の保険料を支払わないで済むが、そのためには年収を「106万円の壁」以下に抑えなければならない(従業員501人以上の事業所の場合)。“年金博士”として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏はこう指摘する。
「収入を無理に抑えるより、妻も厚生年金に加入してもっと稼ぐことを考えるべきでしょう。そのほうが給料も年金額も増えるので、老後資金を貯めるには有利になります」
とくに妻が60歳を過ぎると厚生年金加入のメリットが大きくなる。夫の扶養家族であっても60歳になると3号被保険者の資格を失うため、年金額を増やすには妻が国民年金に任意加入して自分で保険料を納付しなければならない。
それなら、パート先の厚生年金に加入したほうが得だ。保険料の半分を会社が負担してくれるうえに、65歳からは国民年金ではなく、妻も厚生年金を受給できるから年金額がアップする。
夫婦がどうやって老後資金を増やすか。そのための年金戦略の大きな柱になるのが、「妻が60歳以上なら迷わず厚生年金に加入して働く」という選択なのだ。
※週刊ポスト2020年4月17日号