2020年1月、フランスでは学校給食や病院食など集団食の食材を、2年以内に最低でも20%はオーガニックにするという法律が施行された。
食文化として初めてユネスコ無形文化遺産に登録(2010年)された「フランス料理」を誇る美食の国にとって、「安全に作られたものはおいしい」という意識は、すべての国民にとって当たり前のものだ。
フランスを筆頭に、EU各国には1990年代後半から「予防原則」の概念が食品に適用されており、これは、世界で最も進んだ食品安全への取り組みとされている。食品の輸入事情に詳しい東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが解説する。
「たとえば、ある食材に健康を害する疑いがあるとします。アメリカや日本では、科学的に害悪の因果関係が証明されるまでは、“疑わしきは罰せず”で、その食材は流通を続けます。
しかし、因果関係が証明できた時点で、すでに人命に被害が出てしまっている可能性は捨てきれません。そこでEUでは『予防原則』に則って、“疑わしきは除外“します。国際的な食品安全基準を決めるコーデックス委員会で『安全である』と結論が出ていても、不安が残るものは輸入を禁止しています」
「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたように、本来、私たち日本人も、食への深いこだわりを持つ。しかし、戦後から急激に変化した食生活の洋風化や、加工食品などの増加により、主食だった米の消費量は減少。代わりに、肉や乳製品などの畜産物、油などの消費量が増加した。その結果、現在、日本の食料自給率(カロリーベース)はわずか38%まで落ち込んでいる。これは、アメリカの130%、フランスの127%といった数字から大きくかけ離れ、先進国で最低水準だ。
輸入食品に頼らざるを得ない日本では、“アメリカ人も食べない”といわれる、ホルモン投与をした米国産の牛肉や、遺伝子組換え食品が食卓に並んでいる。
問題はそれだけではない。フランス在住で、食品問題に詳しいジャーナリストの羽生のり子さんが指摘する。
「フランス人には、『流行』というものに流されず、ひとたび関心を持った事柄は持続的に追究し、関心を持ち続ける文化があります。フランスで食の安全への意識が高まったのは、1990年代に起こったBSE(狂牛病)問題に起因しています。それ以降、食に対する安全性の問題は、ずっと、フランス国民の関心の的なんです」
一体、フランスと日本では、食の安全意識にどれほどの差があるのだろうか。
◆ホワイトチョコレートの着色料が使用禁止に