4月7日夕、史上初めて特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令された。とはいえ、前日から発令を織り込んでいた東京の街は、すでに人影はまばらだった。繁華街の代名詞・新宿歌舞伎町や一大観光地の浅草、日本の玄関口・羽田空港はひっそりと静まり返る。不気味な静寂が緊急事態を物語る。
少し前までサラリーマンで賑わっていた新橋の飲み屋街も、発令直後に閑古鳥が鳴く。建ち並ぶ居酒屋では、テレビから流れる安倍晋三首相の会見を眺めながら客の一人が、「自粛要請が出る前はいつも満席だったのに、今日は独りか」と呟く。別の店の店主は、「4月に入って売り上げは8割減。昨日、近所の老舗焼き鳥屋がコロナの影響で店を閉めると挨拶に来ました」と肩を落とす。
外出自粛、在宅勤務、学校休校によって自宅で過ごす時間が急増、筋トレ器具やゲームソフトなど、いわゆる“巣ごもり消費”が活況を呈する。任天堂のゲーム『あつまれ どうぶつの森』は10日間で260万8000本を販売した。一方、密閉・密集・密接の「3密」を避けるため、飲食店はテイクアウトに力を入れる。街中を「ウーバーイーツ」の自転車が行き交い、宅配便のトラックが人々の生活を支える。
このまま感染爆発を防ぐことができるのか。静かなる攻防は1か月続く。緊急事態宣言が発令された東京のリアルを追った。
◆新宿ドラッグストア 4月7日 9時1分
自粛ムードの高まりで在宅勤務が増える一方、品薄状態のマスクや日用品の買い溜めに走る人の行列ばかりが目につく。
◆新宿伊勢丹 4月7日 10時23分
伊勢丹新宿店をはじめ、百貨店や商業施設は軒並み臨時休業を発表。「消費増税」「インバウンド消滅」「外出自粛」と、消費はさらに冷え込む。