新型コロナウイルスの感染拡大により、この春のドラマは放送延期になっている作品が多いが、放送開始した作品の中では注目ドラマもある。その1つがNHKよるドラ『いいね!光源氏くん』だ。コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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『いいね!光源氏くん』がいい味を出している。このドラマのポイントは、千葉雄大と伊藤沙莉、主役の二人が元気よく自分の得意技を炸裂させていることだ。
物語は、ある晩、一人暮らしの地味なOL・沙織(伊藤)の部屋に突如、光源氏(千葉)が現れることから始まる。当然、沙織は驚愕。しかし、光はいきなり彼女を抱きしめて「道に迷うてしもうて…」などというのである。ドラマが始まって約3分で出た出た千葉雄大の王子様演技。
千葉といえば、大河ドラマ『平清盛』では高倉天皇、人気シリーズ『家売るオンナ』で、中年女性顧客に「王子」とキャーキャー言われる営業マン役、昨年の『盤上の向日葵』では実業家から転身した謎めいた美男棋士役で注目された経歴を持つ。つぶらな瞳に長いまつ毛。そうでした、光源氏にはぴったりの俳優じゃありませぬか!
なりゆきで彼を部屋に置くことにしたものの、きらびやかな平安貴族の装束から現代のジャージに着替えても「人前で烏帽子を脱ぐなどあり得ぬ」と50センチはある真っ黒な烏帽子をとらなかったり、両手の拳を腰に当てすり足のようにそろそろと街を歩く光に困惑する沙織。さらに出勤中、妹の詩織(入山杏奈)が部屋にやってきて光と遭遇したことを知り、猛ダッシュで帰宅することに。
待ってました。伊藤沙莉の困惑ダッシュ! 3月に放送されたドラマ『三浦部長、本日付けで女性になります。』でも、突然、女性の姿になるという課長(ムロツヨシ)の決心をいち早く知って困惑、課長を追いかけるというシーンがあったが、そこでも慌てて手足をバタバタさせるダッシュで笑わせてくれた。彼女は、こういうバタバタダッシュが抜群にうまい。個人的には日本一だと思っている。二位以下は誰かわからないけど。
とはいえ、単純なドタバタラブコメでないところもこのドラマの味。常に時間に追われる沙織に光は問いかける。「急がねば、生きてゆけぬのか…」