テレビ業界で収録中止が相次ぐ中、増えているのが過去のドラマの再放送だ。外出自粛により家で過ごす時間が増え、「家族のあり方」を描いたホームドラマの数々が思い出される。今だからこそ、もう一度放送してほしい名作をプレイバックする。
◆弱さも持ったカミナリ親父
演出・久世光彦と脚本・向田邦子がタッグを組んだ『時間ですよ』(1965~1990年、TBS系)や『寺内貫太郎一家』(1974~1975年、TBS系)を記憶に残る名作として挙げる人は多い。
『時間ですよ』は銭湯「松の湯」を舞台に、しっかり者の女将を森光子、夫役を船越英二が演じた。従業員やお客も巻き込んだ大家族のドタバタぶりが大人気となった。『寺内貫太郎一家』では、小林亜星が石材店一家の大黒柱である父を演じた。コラムニストの亀和田武氏(71)が言う。
「向田・久世コンビは職人や商売人の家族を好んで描きました。サラリーマンになれば社宅に住めて、出世すれば郊外に家が建てられる。そんなふうに人生が画一的になりつつあった時代に“人間らしい父親像”を表現しやすかったからではないか。
小林亜星が演じた貫太郎なんて、亭主関白で理不尽で、今ならDVの極みと叩かれそうな人物ですが、弱さも持ったカミナリ親父にみんな親しみを持っていた」
『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』両作品に出演した浅田美代子が言う。