新型コロナウイルスの影響で、密閉・密集・密接の「3密」を避けて家族葬を選ぶ人が急増し、そのスタイルにも変化が起きている。
参列者用の椅子は間隔を空けて並べられ、会場の入り口には消毒液が用意されている。僧侶はマスクをしてお経を唱え、通夜振る舞いなどの会食は行わない──。
家族葬を専門に行う大阪セレモニーの山田泰平さんが言う。
「4月以降、故人の友人や親族を呼んで10~20人程度で行う葬儀が減って、同居しているご家族数人だけで行う場合がほとんどです。会食を取りやめる人も増えました。われわれスタッフを含めて、皆がマスクをして、感染には充分に注意しながら執り行っています」
ここ数年を見ても、少人数で行う「家族葬」は増えている。葬儀ポータルサイト「いい葬儀」を運営する鎌倉新書が行った「お葬式に関する全国調査」(2017年)によると、2015年の調査に比べて家族葬は約7%増加。約4割の人が家族葬をしている。
昨年1月に母親を自宅で看取った作家の山口恵以子さんは母との最期の日々を綴った『いつでも母と』を上梓したが、そんな彼女も、家族葬を選んだ1人だ。
「母が家族での葬儀を希望していたのと、91才で亡くなったので、家族以外の知り合いがほとんどいなくなってしまっていたからです。幼なじみも同級生も亡くなり、親戚も子供か孫の代になってしまいました」
実のところ、家族葬に明確な定義はない。葬送・終活ソーシャルワーカーの吉川美津子さんが解説する。
「お通夜、告別式の流れや葬儀のマナーは、一般的な葬儀と変わりません。人によってイメージが異なりますが、家族と一部の親戚、個人と面識のあった友人らが集まる数人~数十人の規模感の葬儀を家族葬と呼ぶことが多いです」
急増している家族葬だが、イメージが先行し、人によって考えている内容に違いがあることから、トラブルに発展することも少なくない。とりわけ気をつけたいのが、よく耳にする「最低限のお葬式でいい」という言葉だ。世代や人によって、その想定する内容は異なると、山田さんは警鐘を鳴らす。
「年配の人は家族で行う場合でもお坊さんを呼んで、通夜と告別式はしてほしいと望んでいることが多いが、若い人なら火葬だけの直葬を望んでいることもある。内容をはっきりさせておかないと、故人と喪主を務める家族、親戚・知人の間で齟齬が起きやすくなります。
トラブルを避けたいのであれば、友人や地域の人はどこまで呼ぶか、仲の悪いきょうだいはどうするかなど、ある程度生前に決めておくのが理想です」
※女性セブン2020年4月30日号