テレビ業界で収録中止が相次ぐ中、増えているのが過去のドラマの再放送だ。外出自粛により家で過ごす時間が増え、「家族のあり方」を描いたホームドラマの数々が思い出される。今だからこそ、もう一度放送してほしい名作をプレイバックする。
西田敏行主演の『池中玄太80キロ』(1980年、日本テレビ系)は不器用な父親像を描いた。
西田演じる父・池中玄太は、未亡人の鶴子(丘みつ子)と結婚する。しかし鶴子が急逝し、血の繋がっていない3人の娘の子育てに奮闘する。
「長女の絵里(杉田かおる)たちは、最初は玄太を受け入れられず、『おじさん』と呼ぶ。周囲からも『父親になるなんて無理だよ』と言われながら、玄太は一生懸命に娘たちと接する。やがてその頑張りが娘たちに認められ、『お父さん』と呼んでもらうシーンに泣きました」(55・教師)
1981年スタートの倉本聰・脚本『北の国から』シリーズ(フジテレビ系)で田中邦衛が演じた父・黒板五郎も涙を誘った。
妻との離婚をきっかけに、純(吉岡秀隆)、蛍(中嶋朋子)を連れて東京から富良野に移り住んだ五郎。数多い涙腺崩壊エピソードの中でも、多くのファンが挙げるのがこの場面だ。
「純が東京の定時制高校に通うために上京するシーンです。東京に行く長距離トラックに乗せてもらうお礼にと、純が運転手に封筒を手渡すんですが、その中に入っていたのは泥のついた1万円札。
運転手(古尾谷雅人)は『これは受け取れない。お前の宝にしろ。一生大事にとっておけ』と純に手渡すんです。僕を東京の大学に行かせてくれた親父も同じ思いだったんじゃないかと涙が止まらなかった」(58・公務員)
※週刊ポスト2020年4月24日号