新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出されて10日あまり。感染拡大を防ぐため、営業停止や仕事量の減少など、多くの人に影響が出ている。そんな中、心配なのが、経済的・精神的に追い込まれ、自殺を考える人が増えることだ。
3月発表の「2019年の自殺者統計」によれば、令和元年の自殺者数は2万169人。10年連続の減少とはいえ、2万人以上が自殺に追い込まれる深刻な状況が続いている。
「ましてや今年は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で、自殺者が急増した1998年のような最悪の事態が再来しかねない。そんな危機感が自殺対策の関係者の間では広がっています」
と話すのは、元NHKの報道ディレクターで、自殺対策支援センター ライフリンクの清水康之さんだ。
1997~1998年は山一証券、長銀などの大手金融機関が次々破綻し、失業者が急増。ホームレスに転落する人が続出した一方、資金繰りの悪化で中小企業の倒産も相次ぎ、自殺者が加速度的に増加した。
「そんな経済が激動した1997年の年度末である1998年3月に、自殺者が8000人以上増え、前年比35%増となりました。一気にわが国の自殺者総数が3万人の大台を突破したのです」(清水さん・以下同)
自殺者数の推移グラフでも1998年の急増は突出。これ以降、14年連続で自殺者数は3万人を超え続け、異常事態の呼び水となった。その状況が、新型コロナの広がりによる影響で、再び起きるのではないかと、危惧されているのだ。
◆困窮者の4つの悩みに対応する
「そもそも日本では、長い間“自殺は個人の問題”とされ、行政も法律がないため、自殺対策をする必要がありませんでした。そんな状況を変えたのは、2006年にできた『自殺対策基本法』です。特に2016年の改正により、全自治体に地域自殺対策計画の策定が義務化され、自殺対策も大きく様変わりしてきています」
代表例として、清水さんが挙げるのが、相談電話の進化と総合相談会の広がりだ。