全国に広がった緊急事態宣言、飲食業界の苦境は察するに余りある。しかし、徐々に支援の仕組みも機能しつつある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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東京が世界一のグルメ都市であることは、もはや論を俟たないと思う。世界中の国や地域の食を、大衆店から高級店までおいしく味わえる、多様な食都市は世界中探しても見当たらない。そんな東京の外食文化がいま大きな転換点を迎えている。通常通りの営業がやりづらいいま、テイクアウトやデリバリーに乗り出す飲食店が急増している。飲食店にとっては、事態が落ち着くまえでの“つなぎ”であり、窮余の一策だ。しかしその周辺には、新たなサービスや支援策が続々と生まれている。
動きが早かったのは大手検索サービスのGoogleだ。同社の地図サービスGoogleマップに登録された膨大な飲食店情報に「テイクアウト」や「デリバリー」という項目をひもづけた。3月後半、日本よりも感染拡大のスピードが早かったアメリカでサービスをスタートし、3月末からは日本国内でも反映されている。
レストラン検索サービス大手の「食べログ」もテイクアウトできる飲食店の情報発信を強化している。実は昨年の時点で「食べログテイクアウト」というスマホアプリをリリースしていたが、4月7日には「テイクアウトできるお店特集」という特設ページを開設。エリアや食べ物のジャンルごとに近隣でテイクアウトができる店が閲覧できるようになっている。
飲食周辺サービスで動きが早かったのは、グルメアプリをリリースする「キッチハイク」だった。3月1日には「飲食チケットを買って未来のお客さんになろう!」というサービスの構想をCOOの山本雅也氏が自身のブログサービスに投稿。3月13日には飲食店向け予約サービスの「トレタ」と連携して、数か月先に飲食店で利用可能な食事券の販売サポートを開始した。
もちろん、SNS上のグルメ好きも動いている。3月下旬にはFacebookでテイクアウトやデリバリー情報の集約と拡散を目指して、グルメ有志が「#コロナフードアクション コロナに負けるな!! 飲食店応援ページ」というコミュニティを立ち上げた。その後、コミュニティには飲食店店主や周辺事業者も集まり、テイクアウトやデリバリーにまつわる課題や解決策、いまの飲食事業者にとって必要な情報が無数に投稿されている。