NEWSの増田貴久が主演を務めるドラマ『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系、毎週水曜深夜24:12〜)。4月15日の第2話で飛び出した「出社するだけで120点」というセリフが、社会人の共感を集めている。誰しも一度は経験したことがありそうな「出社するのが怖い」という感情を、専門家はどう分析するのか。
ドラマ『レンタルなんもしない人』は、2018年6月にTwitterに突然現れた、実在する同名アカウントを元にした物語だ。「なんもしない人(ぼく)を貸し出します」「ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます」という風変わりなサービスは瞬く間に拡散され、フォロワーは1年半で25万人を突破。多数のメディアに取り上げられ、漫画や書籍も出版されている。
前述のドラマ第2話では、ウェブディレクターの城戸隆志(岡山天音)から「仕事でトラブルがあり、会社に出社するのが怖いから付いてきてほしい」という依頼が寄せられた。クライアントの要望通り、売れっ子デザイナーを口説き落とした城戸だったが、やりとりの中でデザイナーが「この案件を降りる」と言い出してしまったのだ。それが「出社が怖い」原因だった。
その後、城戸はレンタルさん(増田貴久)と過ごす中で前向きな気持ちを取り戻し、会社へと向かった。会社員生活に馴染めずドロップアウトした経験があるレンタルさんは、「会社は本当に恐ろしいところだと思う。『そんな場所、出社するだけで120点』ってどこかで聞いたけど、たしかにそうだと思う」と今回の依頼を振り返るのだった──。
産業医(労働者の健康を保つために指導・助言する医師のこと)の小橋正樹氏は、建設業で統括産業医を務める他、IT、保険、製造、イベント業など約10社の嘱託産業医を兼務している。日本では希少性が高い産業医学の専門医を取得している彼は、『レンタルなんもしない人』第2話について、このようにコメントする。
「職場で嫌なことがあったとき、『1〜2日は調子が悪かったが、寝て起きたら回復した』という程度であれば病的とまでは言えません。しかし、不調のサインを放置し続けると、どんどん悪化して適応障害やうつ病などのリスクが高まります。今回の依頼者の場合も『会社に行こうとしたが行けなかった』という状態が1週間以上続くのでしたら専門家の判断を仰いでほしいですね」
職場環境について日々考える立場である小橋氏は、「会社は恐ろしいところ。出社しただけで120点」という言葉をどのように受け止めるだろうか。
「居心地の良さを感じる基準は人それぞれですが、『ひとりの人間として受け容れてもらえているかどうか?』という部分は重要かと思います。成果が出ていないとゴミのような扱いを受ける職場と、ときに厳しい指導はあるとしても、ひとりの人間としてちゃんと向き合ってくれる職場。どちらか選ぶとしたら、多くの方が後者の職場を選ぶのではないでしょうか」