国内

コロナ感染経験者たちの嘆き 風評被害が経済的困窮に直結も

コロナ軽症患者は移送専用の車両でホテルに収容(時事通信フォト)

コロナ軽症患者は移送専用の車両でホテルに収容(時事通信フォト)

 かつてハンセン病は患者だけでなくその家族も社会から排斥され、差別されていた。治療法と感染症についての知識が広まったこと、差別の歴史を反省する気運が高まり日本政府も過去の施策を謝罪した今では、ハンセン病患者に対して差別と排斥を繰り返すことを許容する人はほとんどいないだろう。だが今、まだよく分からない感染症流行への不安からなのだろうか、新型コロナウイルス感染者に対して、一度は反省したはずの、感染症に対する間違った振る舞いと認識があらわになってきた。得体が知らない新しい感染症が身近にある怖ろしさと元感染者たちの戸惑いについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの日本国内の感染者が、ついに1万人を超えた。死者は236人(クルーズ船の乗客含む)にのぼり、未だ収束の目処が全く見えない状況だが、感染者の中には、治療や検査を経て無事に「陰性」となり、日常生活に復帰しようとしている人たちもいる。ただし、風邪や怪我から復帰するのとは訳が違う。元“感染者”たちの戸惑いはあまり知られていない。

「海外旅行から帰ってきて、3月中旬にPCR検査を受けコロナ感染が発覚しました」

 西日本在住の学生・Aさん(20代)は、北欧から帰国した後、少し咳が出るくらいで体調に変化はなかったが、念の為最寄りの保健所に相談。その「念の為」に受けた検査で「陽性反応」が出たために、総合病院に入院したという。

「まさか自分がかかっているとは思いませんでした。よく言われているような発熱、咳などの症状もなかったですし……。感染症に対応している大きな病院に入院するよう言われ、期間は二週間程度と聞いていましたので……」(Aさん)

 特に症状もなく、バイトもしておらず学校は休校、当初はゆっくり勉強や読書でもしよう、そんな軽い気持ちだったという。しかし、2日に一度ペースで行われていたPCR検査の結果は、入院から一週間を過ぎても「陽性」のまま。症状はないが、感染していることは確実で、急に重い症状が出るのではないかと疑った。ちょうどその頃、テレビではとあるニュースが話題になっていた。

「志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったと……。あんな有名人が死ぬくらいだから、僕も死んでもおかしくないと思いましたね。家族や友達に向けて、遺書っぽいメールを送ったりもしました。症状がないのにかかっている、というのが逆に怖かったんです」(Aさん)

 結局、目安の二週間を超えても「陽性」反応が続き、いよいよ精神的に追い詰められていたが、4月に入って検査結果が「陰性」に。胸をなでおろしたが、次の検査結果はまた「陽性」。PCR検査の精度については諸説あるが、Aさんも翻弄されたのだ。

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン