放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、寄席も独演会もなくなり仕事がなくなった落語家たちが、口を封じるマスクづくりにいそしむ様子についてお送りする。
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安倍首相のマスク2枚。なんとも間抜けな大きさである。首相がつけてるのを見た時、給食当番かと思った人も多い。
その点、私の周りの民間人はすぐ動く。山田雅人は「かたり」という芸を磨き、私の企画で爆笑問題の「太田光物語」なるライヴを太田と私をゲストにやろうとしたら、やっぱり中止。ガックリ。電話がかかってきて「ウチの奥さんが裁縫を少々やりますので、マスクを作ってすぐに送ります」マスク騒動の1か月以上も前のことだ。この気持ちが嬉しい。
それをききつけたのか、続々名乗りをあげてくる頼もしい落語家連中。噺家は口が商売とはいえこの国難、口を封じるマスク手作り大作戦。
寄席もなくなり、まったく仕事が無くなった前座達に雇用の場をと、立ちあがったのは我らが林家彦いち。「頼れる落語界の兄貴」であり「無駄に強い男」である。最近見かけないなと思えば、作家の夢枕獏と世界の秘境へ行っている。
マスクの型は彦いちの顔からとったので、SはなくてMとL。一番弟子がアッという間に作り、二番弟子が梱包、三番弟子がラベルを作る分業制を確立。一応3枚千円らしく商品名は「前座マスク 師匠の飛沫を止めた」。