新型コロナウイルス感染拡大のなかで、外出を自粛せざるを得ないなか、人びとの心もギスギスし始めてくる。こんなとき、強くたくましく生きた樹木希林さんならどう行動したのだろうか──。
2018年9月に亡くなった樹木希林さん(享年75)は大の読書家として知られていた。しかし、自宅の書斎に遺されていたのは、100冊だけだった。100冊以上の本は持たないというマイルールがあった樹木さん。手元に置いておきたい本ができたら、100冊の中から1冊を誰かにプレゼントしたというのだ。
書斎に遺した最後の100冊にはどんな本があったのだろうか、樹木希林さんの考えの「源泉」ともいえる愛読書の中から、2冊を紹介する。
◆『神(サムシング・グレート)と見えない世界』矢作直樹・村上和雄
2004年に最初の乳がんに罹り、数年後には13か所に転移、2013年に全身がんを告白した。そのときに読んだという『神(サムシング・グレート)と見えない世界』(祥伝社新書)。東京大学大学院教授の矢作直樹氏は『人は死なない』(バジリコ)、『おかげさまで生きる』(幻冬舎)など現役医師の立場で説く死後の見えない世界の話が話題を呼び、よく知られる存在でもある。
『神と見えない世界』では、亡くなる数日前の謎の微笑、夢で別れを告げる患者、奇跡的な回復など、医療現場で実際起きた、理解を超える現象が論理的に語られる。
樹木さんと40年以上にわたって親交があり、彼女が残した100冊と彼女とのエピソードをまとめた『希林のコトダマ』(芸術新聞社)の著書がある椎根和さん(78才)は、こう話す。
「100冊中いちばん多くの赤線が引かれていました。それは96か所にも及んだ。余命を宣告された希林さんが動揺を感じながらも『死、魂、心』に向かい合っていた心情が伝わってくるようです」