国際情報

中国の国家安全部が唐突に発表した「国家の危機」とは

浙江省の都市を視察する習近平主席(Avalon/時事)

 新型コロナウイルスへの対応をめぐっては中国国内でも様々な意見が飛び交った。そうした流れにおいて国の情報機関からなされた「機密漏洩」の発表は、どういう意味合いを持っているのだろうか。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 世界が新型コロナウイルスのニュース一色に染まるなか、中国は一息ついたとでもいいたいのか、ここにきて感染症以外のニュースのボリュームが増えている。

 そんななか唐突に発表されたのが、国家安全にかかわる事件の詳細である。発表したのは国家安全部。中国中央テレビ(CCTV)が4月18日の『新聞聯播』のなかで伝えた。タイトルは、「国家安全部披露多起危害国家安全案件」だ。

 番組の中で紹介されているのは四つのケースである。一つは、軍の武器・弾薬庫に対する破壊工作を未然に防いだ案件で、残りの三つは国家機密を持ったまま海外に逃亡しようとしたケースである。

 最初のケースで首謀者となったのは、退職した雲南省の元教師だという。共産党政権にダメージを与えて国家を転覆させるため、武器・弾薬庫を襲撃する計画を立てていたという事件の中身と、元教師という組み合わせがなかなかすんなり頭に入ってこないのだが、具体的な時期は公表されていない。

 続く三つは前述したとおり分かりやすいスパイ事件である。

 最初の一人は、元航空研究所のエンジニアで名前は王丕宏。王とその妻の趙汝芹はいくつもの国家機密にかかわるプロジェクトに参画していたが、その時に入手にした機密を握ったまま西側の国に逃れようとしていた。身分を偽って手に入れたパスポートを所持していて、仲介者の導きで出国する予定になっていた。2002年の春節のことである。

 同じく2003年に西側の某国に機密を持ち出したのは国防軍工研究院に属していた研究員である苗敬国だ。同年、妻を連れて出国し、その後2007年に外国籍へと転じた。しかし、上記の二名はすでに国家安全部に逮捕されているという。最後の一人は、まさに逃亡の直前で逮捕された軍工科学研究院高級研究員の張建革である。張に下された判決は懲役15年であった。

 こうした具体的なケースが紹介されるのは稀だが、相変わらず不親切なほど情報が少ない。ただ、普段われわれが日本のメディアを通じて知るような、政府に不都合な人々を片っ端から国家安全のチャネルで処理しているといった内容ではなさそうである。

関連記事

トピックス

6月は“毎年絶好調”というデータも(時事通信フォト)
《ホームラン量産モードの大谷翔平》6月は“毎年絶好調”で「月間20本塁打」もあるか? 見えてくる「年間60本塁打」昨季を超える異次元記録
週刊ポスト
イケオジたちの魅力を山田美保子さんが語る
竹野内豊、仲村トオル、阿部寛、そしてロバート秋山竜次も…“アラフィフ・アラ還”イケオジ芸能人たちの魅力 高身長という共通点も
女性セブン
“教育虐待”を受けたと主張する戸田容疑者の家庭環境とは── (時事通信社)
「母親から数万円の振り込み断られた」東大前駅切りつけ事件・戸田佳孝容疑者(43)の犯行動機に見える「失われた世代」の困難《50万人以上の高齢者が子に仕送りの推計データも》
NEWSポストセブン
秋篠宮と眞子さん夫妻の距離感は(左・宮内庁提供、右・女性セブン)
「悠仁さまの成年式延期」は出産控えた姉・眞子さんへの配慮だった可能性「9月開催で眞子さんの“初里帰り”&秋篠宮ご夫妻と“初孫”の対面実現も」
NEWSポストセブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《フリーク・オフ衝撃の実態》「全身常にピカピカに」コムズ被告が女性に命じた“5分おきの全身ベビーオイル塗り直し”、性的人身売買裁判の行方は
NEWSポストセブン
大食いYouTuber・おごせ綾さん
《体重28.8kgの大食いタレント》おごせ綾(34)“健康が心配になる”特殊すぎる食生活、テレビ出演で「さすがに痩せすぎ」と話題
NEWSポストセブン
美智子さまが初ひ孫を抱くのはいつの日になるだろうか(左・JMPA。右・女性セブン)
【小室眞子さんが出産】美智子さまと上皇さまに初ひ孫を抱いてほしい…初孫として大きな愛を受けてきた眞子さんの思い
女性セブン
出産を間近に控える眞子さん
眞子さん&小室圭さんがしていた第1子誕生直前の “出産準備”「購入した新居はレンガ造りの一戸建て」「引っ越し前後にDIY用品をショッピング」
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《永野芽郁が見せた涙とファイティングポーズ》「まさか自分が報道されるなんて…」『キャスター』打ち上げではにかみながら誓った“女優継続スピーチ”
NEWSポストセブン
子育てのために一戸建てを購入した小室圭さん
【眞子さん極秘出産&築40年近い中古の一戸建て】小室圭さん、アメリカで約1億円マイホーム購入 「頭金600万円」強気の返済計画、今後の収入アップを確信しているのか
女性セブン
カジュアルな服装の小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットで話題》小室眞子さん“ゆったりすぎるコート”で貫いた「国民感情を配慮した極秘出産」、識者は「十分配慮のうえ臨まれていたのでは」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「コメ上納」どころではない「議員特権の米びつ」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「コメ上納」どころではない「議員特権の米びつ」ほか
NEWSポストセブン