「国民が一丸となって乗り越えなければならない」、「心を一つにして力を合わせながら、難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」
これは4月10日、新型コロナウイルスについて専門家によるご進講を受けられた際の天皇陛下のおことばだ。同じテーブルの前に座られ、陛下の隣でご進講を受けられた雅子さまは、その言葉に何度も深くうなずかれていたという。
ワクチンも治療薬もないウイルスの蔓延という未曽有の事態にあってなお、おふたりは深いお気持ちで国民を思われている。
『皇后考』(講談社)の著者で政治学者の原武史さんは、その様子に“令和の両陛下らしさ”を見出したという。
「椅子を並べてふたりで進講を受ける姿は、天皇と皇后が対等な関係であることを視覚的に感じさせるものでした。“皇后が天皇を立てる”といった、これまでの皇后像とは違った新しい夫婦の関係性が垣間見えたように思います」
昨年5月の御代がわりから約1年。雅子さまのご活躍を振り返ると、“三歩下がってついていく”とは違った「新しい皇后像」が見えてきた──。
◆胸中が凝縮されたお言葉
「この1年は雅子さまにとって、ご自分が“いるだけで価値がある存在”であることを再認識できた年だったのではないでしょうか」
コラムニストで『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(幻冬舎)の著者である矢部万紀子さんは、そう振り返る。
元外交官という肩書を持ち、職業経験を持たれる初めての皇后である雅子さま。皇室に入られるまで、ご自分の仕事に誇りと生きがいを感じられていたことだろう。しかし、皇太子妃として皇室に入られた雅子さまを待ち受けていたのは、何よりもお世継を求める声だった。
「1993年の婚約内定の記者会見で記者から“希望するお子さまの人数”について尋ねられ、ユーモアあるお答えをされました。雅子さま自身も男子出産が期待されていることは充分に理解されていたはずです。しかし、そればかりは努力だけではどうにもならないこと。
どれだけほかのことで活躍しても『男子出産』が第一に求められ、“なんのためにここにいるのだろうか”と、ご自分の存在意義が見えなくなってしまったのではないでしょうか」(矢部さん)