過ちをおかせば報いを受けるのは常。だが、厳しく叱りさえすれば事態は改善するのかといえば、どうだろうか。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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新型コロナウイルスで落ち着かない日々ですが、それはそれとして、今こそフェミニズムの踏ん張り時ではないでしょうか。このままでは、せっかくの先人たちの努力が水泡に帰してしまいます。声を上げて戦ってきた先人たちのおかげで、男女が平等であることは大切だという当たり前の認識が少しずつ広がってきました。
いっぽうで一部の「フェミニスト」の狼藉っぷりや「フェミニズム」の名の元に行なわれる一部の残念な行動は、多くの人の眉をひそめさせています。その手の人たちがその手の行動を繰り返すようなら、ますます「フェミニストは怖い」「フェミニズムは面倒臭い」という歪んだイメージが強まってしまうでしょう。
ここまで読んで、脊髄反射で「こいつはフェミニズムを分断させようとしている!」「ありもしないレッテルを貼ってフェミニストを迫害しようとするミソジニストだ!」とレッテルを貼ろうとする人もいるかもしれません。今の日本で「フェミニスト」や「フェミニズム」という言葉に、マイナスのイメージがないと本気で思っているなら、仮にあるとしても原因は男性側にあると本気で思っているなら、それはかなり偏った認識です。
もちろん、今のような状況はよくないと思っているからこそ、フェミニズムがもっと定着して、男性も女性もフェミニストであることが当たり前の世の中になってほしいと願っているからこそ、おせっかいを承知で、キツイお叱りを覚悟で、わざわざ言わなくてもいいことを申し上げる次第です。わかってくれる人がいると信じつつ。
ほかでもありません。まず取り上げたいのは、4月23日深夜のニッポン放送『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』における、岡村の呆れた発言のことです。最近は「radiko」という便利なもの(アプリ)があるので、いちおう前後の流れも含めて聞いてみましたが、あれはゲスで無神経で失礼です。そりゃ、いろんな人に叱られるでしょう。
しかも、最近は「問題発言」を拾ってまとめてくれる親切なニュースサイトもあるし、発信力の大きな人が手練れの技を駆使して読んだ人の感情を激しく揺さぶる伝え方をしてくれます。断片的な情報として受け取ったら、さぞ腹が立つに違いありません。深夜のラジオだけだったら知ることもなかったのに、便利な世の中になったものです。
当然ですが、岡村を擁護する意図も義理もありません。多くの人が批判の声をあげて大炎上したことで、彼の言葉に潜んでいる差別意識や勘違いがあぶり出されました。私も含めて「自分の中にも彼と同じ差別意識があるのではないか」と胸に手を当てて考えた男性も少なくないでしょう。番組関係者に限らずメディア関係者全員が、何がいけなかったのか考え、今後同じ過ちをしないようにしようと肝に銘じたに違いありません。
翌週4月30日深夜の同番組で、岡村は自分の発言について謝罪と反省の言葉を何度も繰り返しました。当然のことです。さらに、相方の矢部浩之が登場して公開説教を展開。ふたりの関係が悪化していることをぶっちゃけつつ、なぜ距離ができたのか、矢部が岡村を長年どう見ていて、どんな違和感や怒りを感じていたのか。そんなことを忌憚なく本人にぶつけるという迫力の内容でした。いいものを聞かせてもらったという印象です。
問題発言が波紋を呼び、多くの批判が寄せられたことで、プラスの副産物がたくさんありました。フェミニズムの考え方に後押しされて、フェミニストの人たちが積極的に声を上げてくれたおかげです。ただ、よかったことばかりではありません。彼の発言が話題になった直後の4月29日に、ネット上で【女性軽視発言をした岡村隆史氏に対しNHK「チコちゃんに叱られる」の降板及び謝罪を求める署名活動】が立ち上がります。