2019年10月の火災で正殿を含む7棟が全焼した沖縄の首里城。年間280万人が訪れる県内を代表する観光スポットが焼失し、沖縄経済への甚大な影響が懸念されていた。その一方、新発見もあった。出火後の調査で首里城正殿の地下に新たな石組みの地下遺構がみつかったのだ。
早速、県はGWに公開イベントを計画していた。ところが、である。「(新型コロナウイルスの)感染拡大防止の観点から延期」(知事公室特命推進課)となってしまったのだ。
もちろん、致し方ないところではあるだろう。GW期間中も全国に緊急事態宣言が発令されており、玉城デニー・沖縄県知事が自ら、ツイッターを通じて「どうか今の沖縄への旅はキャンセルして受け入れ可能な時期までお待ち下さい」と呼びかけを行なわなくてはならない状況に追い込まれている。いつまでかかるかはわからないが、県の産業の柱である観光業は、しばらくの間、新規のPR策が打てる状況にはない。「首里城地下の新たな遺構」のお披露目も当分、先にならざるを得ない。
まさに泣きっ面に蜂──観光関係者は暗澹たる気持ちかと思いきや、意外にのんびり構えている声も聞こえてきた。現地旅行業関係者が語る。
「20年近く前のSARS(重症急性呼吸器症候群)の時は半年で収束した。ちょっと一休みさぁ」
タクシー運転手など目の前の減収に苦しむ業種は少なくないが、「もともと高校生の修学旅行などは10月以降がピークだし、GWに予定していたツアーを秋冬にスライドしたいとの打診もある。巻き返しは可能だろう」(現地宿泊業者)と前向きな声もある。首里城も2022年に再建が始まる見通しだ。
新型コロナを巡る先行きは不透明極まりないが、前出の旅行業者は「なんくるないさー」と微笑む。「正しいことをしていれば必ずうまくいく」の意だ。この大らかな見通しが現実となることを、誰もが願っている。
※週刊ポスト2020年5月8・15日号