休業補償について、情報が錯綜し、仕事の現場では混乱が起きている。都道府県によって事情が異なり、ある地方自治体は「東京都のように財政に余裕がない」と休業の補償にあたる金銭を用意出来ないとこぼすほどだ。しかし、その東京都ですら実際の営業自粛に対する補償内容は二転三転、エステやマッサージなど、連絡先としての事務所はかまえても店舗を持たない業態が珍しくなくなっているが、同じサービスを提供しても無店舗型事業者は補償の対象ではないというのだ。いったんは休業補償の対象と言われながら、財政に余裕があると言われている東京都内ですら対象から外されて感染拡大を防ぐことより目の前の生活を確保するために営業を続けざるを得なくなっている実態について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自治体から休業要請を受けた業種の中に「性風俗店」が含まれていたのは周知の通り。ところが、こうした業界で働く人々には休業補償などが支払われないという政府の指針が大バッシングを受け、一転、支払われることになった……など、業界を取り巻く状況は混乱していた。筆者の取材によれば現在、多くの風俗店が自主的な休業状態にあるが、この状況の中で、営業を再開したという業者も存在する。
「休業要請が出ると聞き、4月16日から休業の予定で、店のホームページでも告知を出していました……」
こう話すのは、都内で派遣型風俗店1店舗を営む堀田大輔さん(仮名・40代)。店で働く女性の中には、客との接触から感染するのを心配する声も上がっており、正式な休業要請、そして休業に対する”協力金”が出るのであればと、店の休業を決めていたと話す。しかし……。
「16日の夕方、同業の知人から”協力金がもらえないらしい”と電話がかかってきました。そんなはずはないと、都のホームページを穴があくほど確認したんです。休業要請が出ている業種だから、当然補償の類はあるのだろうと」(堀田さん)
実はこの日の午前、堀田さんは都が設置した「緊急事態措置等・感染拡大防止協力金相談センター」に電話し、自身が運営する店の運営形態などを全て伝えた上で、協力金が出る、ということを口頭で確認していた。まさか朝令暮改、やはり風俗関係者には金が支払われない、そう変更があったのか。
「センターのホームページには、確かに休業要請業種として“派遣型風俗店”の記述があったのですが、改めて確認したところ、風俗店でも店舗を持たない店はダメだ、そう言われたんです。いくらなんでもこれはおかしいと思いましたが、出ないなら営業を続けるしかないと」(堀田さん)
筆者も件のセンターに問い合わせたが、回答は同じく「派遣型風俗店ではあっても、店舗がなければ協力金は支払われない」とのことだった。HPで休業要請が出されていた業種ではないか、そう問うても「無店舗型は対象外」と繰り返すのみ。堀田さんによれば、翌17日に「施設を運営していない場合は対象外」とホームページに追加記載されたというから、業界関係者は落胆よりも「裏切られた」「差別ではないか」という強い怒りを覚えただろう。
現在、様々な規制によって、店舗型風俗店を新規で開設することは実質不可能となっている。そうした規制のなかでも営業出来る形として、近年爆発的に増えたのが「派遣型風俗店」である。店舗がないからといって違法なのではなく、風営法にのっとった許可を得ている合法な存在だ。堀田さんもきちんと当局に届け出を出し、正当に営業をしている。ここに差異があるとすれば何なのか。