1年ほど前の5月1日、令和の世がスタートした。新皇后となられた雅子さまは心身の不調を抱えていらっしゃりながらも、国民に笑顔を見せてきた。雅子さまのご活躍において、上皇后美智子さまが残されたものの影響は大きい。
被災地訪問をはじめとした、国民に寄り添う姿勢は、美智子さまが絶えず大切にしてこられたものだ。『皇后考』(講談社)の著者で政治学者の原武史さんはこう語る。
「上皇后は皇太子妃時代から、地方を訪れるたびに、国民と直接対話する機会を積極的につくってきました。上皇とともに懇談会を開き、議論することもありました。そうした姿勢は、皇后にも受け継がれているのかもしれません」
昨年9月の「全国豊かな海づくり大会」前日、宿泊先のホテルで行われたレセプションパーティーで、そんな雅子さまの姿勢を表す一幕があった。
当初、両陛下はレセプション会場にしつらえられた金屏風の前に立たれていた。ところが、乾杯を終えるとおふたりはすぐに金屏風の前から離れられ、会場にいる参加者の中へと入っていかれたのだ。
「平成の時代は、国民と対話をされることはあっても、そうして人々の中に入っていくことはありませんでした。そうした“国民への歩み寄り”の方法は、まさに令和流といえるのではないでしょうか。また、両陛下が横に並んで話され、雅子さまも積極的に参加者に質問されていたのが印象的でした」(皇室記者)
陛下と横に並ばれ、共に行動される。そうしたお姿も、令和流のスタイルなのかもしれない。
「4月10日に行われた新型コロナウイルスに関する進講でも、ふたりは横に並んで座り、一緒に専門家の話を聞いていました。専門家から互いに等距離でいる、そんな対等な光景は、新鮮なものに感じられました」(原さん)
雅子さまは決して、人前に立ちたがる方ではない。雅子さまをよく知る知人は、口をそろえて雅子さまを「非常に控えめな方だ」と評する。学生時代のご友人と撮られた写真で、雅子さまはいつも目立たない端の方にいらっしゃったそうだ。
しかし、雅子さまは同時に、ご自分の考えをしっかりと持たれ、時にはっきりとご自分の言葉で意見を述べられる方でもあるという。『素顔の雅子さま』(河出書房新社)の著者で放送作家のつげのり子さんはこう語る。
「いまの時代は、女性が夫の後ろを歩くのでなく、肩を並べて歩くのが当たり前の時代です。皇室は時代を映す鏡でもある。皇后という存在は、時代に合った女性の理想像を示すものでもあるのではないでしょうか。これからは、皇后がはっきりと意見を述べることが歓迎される世の中へと、変わっていくのだと思います」