芸能

小松政夫、植木等に言われた「焦りなさんな」に救われた

小松政夫が植木等からかけられた言葉とは

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・小松政夫が植木等の付き人から独立したころの思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 小松政夫は一九六七年に植木等の付き人から独立、一本立ちした道を歩むようになる。

「弟子とか付き人とは、どのくらいやるものなのか。卒業というのはどういう日を迎えることなのかと漠然と考えていました。

 三年十か月目になった頃、植木の車を運転していたら『お前な、この間、社長のところへ行くから待っていてくれと言って待たせたことあったな』と言ってくるんです。そして『あの時な、実はお前の話をしたんだよ。あの男を渡辺プロにタレントとして契約してやってくれと。給料もマネージャーも待遇は全て決めてきたから、明日からもう来なくていいよ』って。

 涙がワーッと出ちゃって。ワイパーが欲しいと思ったくらい。運転して危なくてしょうがないから、車を停めさせてもらってハンドルを持ったまま泣きました。それから少ししたら、植木がまた粋でね。『俺も急がないけど、そろそろ行くか』と。

 植木の家に帰ると、私のためにスーツを作ってやろうと仕立て屋を呼んでいたんです。

 縫い合わせる前に裏地に名前を刺しゅうするんですが、芸名の『小松政夫』を入れるか本名の『松崎雅臣』を入れるかで迷っていたら、植木が珍しくムッとした顔をしているんです。

『なぜ松崎と入れるんだ?』『おこがましいと思って』と答えたら、『おこがましいもクソもあるか。お前は小松政夫じゃないか、俺は小松政夫に作ってやったんだ』って。不愉快そうな顔を初めて見ました」

 独立後すぐ、『今週の爆笑王』というTBSのバラエティ番組の司会を任されることになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン