5月31日まで延長された緊急事態宣言。安倍晋三首相は14日を目途に解除可否の基準を示すとしたものの、遅きに失した感は否めない。論理的かつ具体的な“ゴール”が示されなければ、国民は疲弊するばかりだ。各分野の専門家は“望ましい出口戦略”をどう考えているのか。
全国民に一律で緊急事態を解除するのではなく、「高リスク群」と「低リスク群」で時期を分けるべきとの意見がある。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が言う。
「新型コロナは、高齢者と、糖尿病や心不全などの基礎疾患を持っている人において重症化リスクが高いことが分かっています。死亡率は70代以上で平均を上回り、80代、90代では平均の6倍という厚労省のデータもある。高リスク群への外出制限の解除は慎重に判断すべきです。基礎疾患のない健康な若年層など、低リスク群から徐々に解除するのがよいでしょう」
患者だけでなく、医療従事者の安全確保や負担軽減を条件に含めるとの意見も上がった。千葉大学医学部附属病院副病院長で、病院経営管理学研究センター長・特任教授の井上貴裕氏が指摘する。
「国内でも多くの院内感染が報告されているように、医療従事者は日々、感染リスクに晒されており、緊急事態宣言が解除されて仮に感染者が増えた場合、再び医療機関で働く人々の負担が増大するでしょう。より感染リスクが低い唾液検査の導入など、医療従事者への感染リスクを低減する体制が必要です。
陽性患者を受け入れる場合、重症・軽症の度合いが正確に把握でき、重症かつ緊急性が高い患者は医療機関へ、軽症者はホテルへ、などに振り分ける仕組みを、各地域でばらつきなく確立することで、受け入れ先の医療機関の負担も軽減できるはずです」
※週刊ポスト2020年5月22・29日号