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人類と感染症の歴史 克服した文明のみが生き残る

牛痘を用いた天然痘の予防接種に殺到する人々を描いたイギリス人画家の風刺画(写真/AFLO)

牛痘を用いた天然痘の予防接種に殺到する人々を描いたイギリスの画家による風刺画(画像/AFLO)

 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は5月1日、「多くの市民の協力により爆発的な感染拡大(オーバーシュート)は免れたものの、長丁場に備え、感染拡大を予防する『新しい生活様式』に移行していく必要がある」と提言した。世の関心は「いつになれば元通りの生活ができるのか」という一点に集中するが、もう“元通りの生活”は戻ってこないと覚悟するべきなのだ。つまり、私たちはこれからも、この新しいウイルスと生きていかなければならないにほかならない。

 ひとまず4日には緊急事態宣言が延長され、子供たちの休校や外出自粛期間は継続されることになった。社会生活や経済活動が大きく制限され、レジャーはもちろん、職場に行くことや買い物さえままならない。新たな収録を行えないため、テレビをつけても「総集編」や「再放送」ばかり──「こんな異常事態は経験したことがない」。誰もがそう感じているはずだが、実は有史以来の人類の歴史を振り返ると、そこには常に感染症との闘いがあったといっても過言ではない。

 古くは14世紀に流行したペスト。「黒死病」と呼ばれヨーロッパで猛威をふるい、人口の約半数が死亡したとも伝えられる。そんな折に書かれたのが中世イタリアを代表する文学作品『デカメロン』だ。

 このタイトルはギリシャ語で「10日間」という意味を持つ。都市部のフィレンツェからペストを避けて田園へと疎開した富裕な男女10人が、10日間を使って1日1話ずつ語るという設定で、エロスもふんだんに盛り込まれる同作だが、現代に至るまで傑作であると評価されるのは、彼らの語る物語の背景に「ペストへの恐怖」「死からの心理的逃避」があるからだといわれる。

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