新型コロナウイルス感染防止のため、多くの学校が長期休校となり、子供たちも大きな不安を抱えていることだろう。そこで、絵本作家の五味太郎氏(74才)が、子供たちにメッセージを送る。
【プロフィール】
絵本作家・五味太郎/東京生まれ。1973年に『みち』を刊行し、以降発表した作品は400冊以上。海外18か国以上で翻訳・出版されている。『たべたの だあれ』『きんぎょが にげた』『みんなうんち』など著書多数。
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いま、世界中に大雨が降り続いてるって考えたらどうだろう? 濡れるのは嫌だし、いつやむのかわからないから大変だ。「みんなびしょびしょだよね」って思うしかない。新型コロナウイルスって、そういうことじゃないかな?
そりゃ不安だよ。この五味太郎でさえそうなんだから、「みんなが不安なのも当たりめェじゃん」って話だよ。
お父さんだってお母さんだって、学校の先生だって、おじいちゃんだっておばあちゃんだって不安なんだ。まわりの大人は、自分の気持ちをごまかして平気そうにふるまっているかもしれないけれど、不安じゃないやつなんて、誰ひとりいない。
だからもし君が不安を感じているなら、それは健康的だといえる。だって自分の気持ちに正直になれてるんだから。
いまは「有事」だという言い方があるけれど、「平時」のときだって不安につながる問題がたくさんあった。
学校にあんまり行きたくないな、と思っても行くのが当たり前だから我慢してたって子は、たくさんいるんじゃないかなあ。
家族だってそうだよね。お父さんとお母さんがうまくいっているように見えていたのは家で顔を合わせる時間が少なかったからかもしれない。
国だってそう。超高齢社会に1000兆円を超える借金。森友・加計問題もあったし、「桜を見る会」のことも解決していない。カジノ法案だってもめてたよね? 平時だって問題が山積みだったのに、それがコロナでみんな飛んじゃった。
コロナによって「不安」の形がはっきりしてきたからこそ、みんな「安心したい」と思っている。だけど「安心」って具体的にはどういうことだろう。お金があればいい、と思うかもしれない。でも、あったらあったで次は「お金がなくなるかもしれない」という不安が生まれる。
生活が安定する、既婚者という肩書が手に入る、という理由で「結婚」が安心だという人もいるかもしれない。
でも、家の居心地が悪くて、会社や新橋の飲み屋に居場所を求めている大人はたくさんいる。
生活を安定させるために会社に行くのだってそうだ。毎朝、満員電車に押し込まれて、通勤する。そんな状態が安心なのかな? でも考えないようにして、我慢してきた。
君たち子供を取り巻く環境だって、実はちっとも安心じゃなかったのではないだろうか。毎朝登校する通学路だって、トラックがバンバン行き来する道路だったりしただろう。