新型コロナウイルスの感染を防ぐために密集、密閉、密着の「3密」になりやすい場所、その代表格として注目を集め続けたパチンコ業界は、近年、苦境にある。2019年6月に公表された帝国データバンクの調査によると、パチンコホール売上高は4年連続で減少、倒産件数も2年連続で増加している。今回の自粛による営業休止は、パチンコをめぐる環境にどんな変化をもたらしそうなのか。ライターの森鷹久氏が、事業存続に悩むパチンコ経営者の苦悩をレポートする。
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「ゴールデンウィーク明けから営業を再開しましたが、かつてないほどの逆風を感じています。コロナ以前でも売り上げが落ちていたのに、もはや先はない。ゲームセンターの運営や飲食店経営にも乗り出しましたが、こちらも休業でやらないほうがよかった、といった状況」
筆者の電話取材にか細い声でこたえたのは、九州地方のパチンコチェーン店幹部・Y氏(30代)。祖父の時代から現在まで、地元に根ざした遊技場、いわゆる「パチンコ・スロット店」の経営を家業としてきた。1990年代の最盛期には十数店を展開、社員数も500名以上を数え、Y氏一族は地元の名士の名を欲しいままにしてきた。
ところがこの十数年、遊技場を取り巻く環境は一変。ギャンブル依存症が社会問題化し、経営体制のグレーな部分が公然と批判されるようになると、利用者数も激減。法改正も相次ぎ「儲かる遊技台」の使用が次々に規制され、客離れはより顕著になった。そこにきて、今回の「コロナ騒ぎ」で、遊技場経営者は「悪のレッテル」を貼られることとなった。
「パチンコ・スロット店は休業要請の対象でしたが、一ヶ月近く店を閉めて、数十万円とか100万円の休業協力金では何の足しにもならない。単店舗でも1日1千万円以上が動くことで成り立っているので、とにかく開けておくしかない。店を開けていると、マスコミが取材に来たり、右翼の街宣車がうろちょろしたり……。商店街からも白眼視され、店には嫌がらせの電話や投書も相次ぎました」(Y氏)