「経営があまり安定していない社もありますが(中略)あなた方は読売新聞に入った以上、一生苦労はしません」
新入社員76人を前に熱弁を振るったのは、御年93歳の「ナベツネ」こと渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆だ。
新型コロナの感染拡大が続いていた4月1日に行なわれた入社式は、新入社員と役員らに出席が限られる厳戒態勢だったが、そこに渡辺主筆が登壇したのである。
「後日、配布された社報で、渡辺主筆が入社式に出席したことを知り、驚いた社員は多かった」(読売新聞社員)
社報を見ると、新入社員は前後左右を空けて着席するなど、感染症対策に注意が払われていた様子が窺える。そんな状況で、新入社員に対し、渡辺主筆は何を伝えたのか。
「“経営の盤石さ”を強調する内容でした。三番手だった読売新聞が販売部数で世界一に登り詰めた歴史を紹介し、部数こそ800万部まで減少しているが巨人軍や交響楽団、遊園地など多角経営をはかってきたので、1000万部時代よりも経営が安定していることを説明していました」(同前)
意外にもかつて政治部の看板記者として鳴らした“武勇伝”はナシ。
社報に掲載された挨拶文を確認すると、「経営」という言葉は実に13回。終盤では再び「安定した生活を終身保障されると思っていい」と念押ししている。