Netflixで今年2月から配信されている韓国ドラマ『愛の不時着』が大人気となっている。
パラグライダーの事故で北朝鮮に不時着したソウルの財閥令嬢ユン・セリ(ソン・イェジン、38才)と、北朝鮮の将校リ・ジョンヒョク(ヒョンビン、37才)との恋を描く同作。韓国では2019年12月から今年2月まで放送され、ケーブル放送「tvN」で歴代1位の最高視聴率21.7%をマークした。
日本でも異例の売り上げとなった小説『82年生まれ、キム・ジヨン』や、米アカデミー作品賞を獲得した映画『パラサイト』といった作品を立て続けにヒットさせている韓国から、新たな大ヒット作だ。
◆『パラサイト』と『愛の不時着』が同時期に生まれた必然
「韓国の観客、映画ファンに感謝したい。彼らは躊躇せず率直な意見をくれる。それに不平を言うことはできない。彼らが監督や製作者たちをここまで押し上げてくれた。それがなければ韓国映画はここまでにならなかった」
今年のアカデミー賞作品賞に輝いた映画『パラサイト』の授賞式で、配給先のCJグループの副会長イ・ミギョン氏はこうスピーチした。
この『パラサイト』に投資をしたCJグループこそ、『愛の不時着』を制作したケーブル局tvNを傘下に持つ企業だ。実は『愛の不時着』の成功にはもう1つの隠されたストーリーがある。デジタルメディアウオッチャーの大原通郎さんが言う。
「1997年の通貨危機を経験した韓国は、その最中に大統領に就任した金大中さんによって、国策として韓国コンテンツ(K-POPやKドラマ)の輸出を進めました。その原動力となったのが、ハリウッドなどアメリカのメディア企業で働いていた韓国人の祖国への呼び寄せです。こうしたコンテンツ重視の国策の後押しで、CJグループのような財閥が映像制作会社を作って、コンテンツに豊富な資金を投入してきたのです」
その過程で日本に韓国ドラマブームが生まれた。2003年に『冬のソナタ』が第一次ブームを巻き起こしたのに続き、2010年からは『美男ですね』『花より男子』などで若手俳優やアイドルが第二次ブームをけん引。2017年には『トッケビ』を筆頭に第三次ブームが発生した。