俳優・石倉良信(51)は、コケ(苔)を入れたペンダントを常に身に着け、自宅でコケを数十種類も育てるほどのコケ好きとして知られる。俳優業の傍ら、電子書籍『苔道』も執筆、昨年『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演すると、溢れる“コケ愛”を語って話題になった。 その魅力にとりつかれたのは16年前。育てていたモミジの盆栽に張り付けようと購入したのがきっかけだったという。
「育て方が分からず、数日経ったらコケだけが干からびてしまったんです。焦って調べると、簡単に枯れないとわかりました。水不足で休眠状態に入っていたようで、水をあげたら数日で元気になりました」
以来、底知れぬ生命力に魅了され、深淵なるコケの世界に引き込まれていった。
「驚くことに、コケは土がなくても生きることができるのです。アスファルトにコケが生えて、その上にタンポポが咲いていることがありますが、コケの群落に根づいて成長しているからです。タンポポに陽を遮られたコケは、光合成ができない中、逆境にへこたれず主役を輝かせる。僕は脇役をやることが多いから、自分の役者人生と重なるところがありました。コケのかっこいい生き様に元気をもらいます」
石倉氏はコロナ禍の今だからこそ、身近にあるコケを楽しんでほしいと話す。
「電柱やガードレールの下、公園の植木など、散歩道に生息しています。雨の日は水滴で輝いて、言葉にならない美しさ。晴れた日は霧吹きを持参して、水をかけるといいですよ」
【プロフィール】いしくら・よしのぶ/1968年生まれ、東京都出身。1995年から舞台を中心に活動する俳優。出演する復興支演舞台『イシノマキにいた時間』(2011年~)は全国30都市で公演を重ねる。コケ好きが高じてテレビ、ラジオに出演するなど、多方面で活躍中。
◆撮影/鈴木省一
※週刊ポスト2020年6月5日号