新型コロナを巡る安倍政権の迷走が国民を失望させている。自民党内の人材不足も明白になり、本来ならばあり得ないはずの“待望論”まで出始めた。この国の政治不信もまた、危機的なレベルに達している。
危機の時ほど、政治家は真価を問われる。新型コロナ対策の「決断と実行」で存在感を高めたのが全国の知事たちだ。
鈴木直道・北海道知事は国に先駆け2月に外出自粛を要請。小池百合子・東京都知事は「ロックダウン」を示唆し政府の尻を叩いて緊急事態宣言を出させ、吉村洋文・大阪府知事は「大阪モデル」で常に政府に先んじる一手を打った。
その中でも「次の総理」への待望論が高まっているのが44歳の吉村氏だ。全国的に感染が拡大したとされる3月の3連休(20~22日)に大阪・兵庫間の移動制限を要請したのを皮切りに、国の新型コロナ特措法を「誰が最終責任者なのかを曖昧にしている責任逃れ法律」と批判。自粛要請に応じないパチンコ店の名前を公表し全店休業させるなど、知事の権限を最大活用した。そうしたリーダーシップを見せたことから「将来の総理に」といった待望論も出ている。
ただ、いくら国民が望んでも、吉村氏の総理への道は容易ではない。知事から総理になるには、国政選挙に出馬して国会議員となり、国会で多数派を握って首班指名で勝利する手順を踏まなければならない。自民党では知事から国会議員になっても、国政に出た時点で1回生の“陣笠議員”としての下積みから始まり、当選回数を重ねなければ党の幹部にはなれない。政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏が語る。
「吉村氏が総理を目指すなら国政に出て日本維新の会の党首になり、さらに総選挙で過半数を取る必要がある。道のりは遠い。永田町の常識だけで言えば、知事からすぐ総理というのは現実的ではない」