夏の全国高校野球選手権大会と地方大会が中止──。新型コロナウイルスの「第二波」が懸念されるいま、その決断は仕方がないのかもしれない。それでも、高校3年生の夏は一度きり。なんとかして試合をさせてあげたい、そう思う声が沸き上がっている。甲子園を沸かせた定岡正二さん(63才)に聞いた。
◆地方大会? いやいや無観客でいいから全国大会を
1970年代、甘いマスクで女性ファンから絶大な人気を誇ったのが、“サダ坊”こと定岡正二さんだ。鹿児島実業高校時代、2度にわたり夏に甲子園に出場し、3年生の夏はエースとして活躍。ベスト4まで進み、ドラフトでは巨人から1位指名を受けた。
「ぼくは幼稚園でグローブとバットを持った瞬間から、甲子園を意識していましたし、大切なことはすべて高校野球に教わりました。昔の野球部では厳しい上下関係や、練習中に喉が渇いても水を飲めないなんていうのは当たり前。そんな過酷な環境に耐えられたのは、甲子園という“ご褒美”があったから。ぼくのようなド田舎の高校生が注目を浴びたのも、まさに甲子園があったからこその奇跡ですし(笑い)。
たとえ甲子園出場を逃してもチームメートは一生の宝。負けた経験も酒を飲みながら語り合えます。その思い出を作れないと思うと、胸が張り裂ける思いです」
だからこそ、球児には真剣勝負の場を提供してあげたいと定岡さんは言う。
「高校球児は、大人に勇気や感動を与えてくれる存在だと感じます。だから、今回は大人が知恵を絞って球児に手を差し伸べてやらないと。
彼らは、1回負けたら終わりという緊張感と潔さの中で野球がやりたいはず。無観客でもいいので、真剣勝負をさせてあげたい。地方大会をやろうという動きもありますが、やっぱり全国大会とは規模も雰囲気も全然違いますよね。甲子園でなくてもいいので全国大会をやってあげてほしいです」
※女性セブン2020年6月11日号