コロナ後の不況や収入減で最も懸念されているのが、住宅ローンを返済できずにマンションなどのマイホームを手放さざるを得ない人が続出するのではないかという問題だ。すでに住宅金融支援機構には4月以降ローン返済に関する相談が急増しているという。特にこれまで高値で推移してきた首都圏のマンション市場は今後どうなってしまうのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が今後の動向を予想する。
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一寸先は闇……これは政界に限ったことではない。私たちの生きる世は、得てしてそういうものだと考えるべきだろう。
振り返れば、過去にはこれまで我々が辿ったレールが確かに敷かれている。未来はその延長線上にあるものだと人々は考えがちだが、実際はそうでないことも多い。今回のコロナ禍は、地球規模でそのことをまざまざと感じさせてくれた。未来のことは、誰にも分からないのだ。
ただ、私たちの住む日本は世界でもかなり安定した社会を築いてきた。物価が大きく変動することはなく、景気が悪くなっても数年で回復軌道に乗り、ここ数年は大変な人手不足で失業率は歴史的な低水準だった。これほど安定感のある社会は、他の先進国を見渡してもそうそうない。
だからかどうか、この国では「35年返済の住宅ローン」という、冷静に考えれば何ともリアリティのない一般人向けの借金システムが一般化していた。年収の7倍くらいまでの大金を借りて住宅を購入し、それを35年かけて返済するというシステムである。
首都圏で販売される多くの新築マンションの購入には、このシステムが利用されている。中には一人で借り入れるだけでは足りないので、夫婦で35年返済ローンを借り入れて購入されているマンションもある。こういったやり方は「ペアローン」と呼ばれる。湾岸のタワーマンション購入者に多く見られる購入パターンだという。もちろん、登記上の所有者も持ち分に合わせた共有となるケースが多い。
ただ、心配なこともある。統計数字から予測すると、新たに結婚するカップルのうち、3組に1組は離婚するらしい。ということは、マンション購入のために組まれたペアローンの3分の1は将来のいつかに複雑な処理を必要とする事態に陥る──ということだろうか。