映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、コメディアンの小松政夫が考える、“ギャグ”と“はやり言葉”の違いなどについて語った言葉をお届けする。
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小松政夫は『必殺仕置屋稼業』(一九七五年、朝日放送)の下っ引き役や『大岡越前』第十二部(一九九一年、TBS)の同心役など、時代劇にも数多く出演してきた。
「なんでもやれるのが、コメディアンなんです。歌も踊りも日舞もタップも。『嫌だ、こういうことはできない』ということは、ありえません。『コメディアン』という言葉は奥深い。そういう点で、私もまだまだ発展途上だと言いたい。
ただ、近年の時代劇は所作を知らない人たちがやっている。京都の撮影所に行くと、できてない女優に監督は平気で言いましたよ。『ネエちゃん、あんたパンツを穿いているのか。パンツを穿いていると、走る時に大股になる。それだと色気がないんだ。パンツを穿かず、腰巻だけだから裾が乱れないように心がけるんだ』と。
その通りなんですよ。見ていて、もう恥ずかしくてしょうがない。男も袴を穿くときに胸の近くまで上げている。そういうのは『七五三』だよ。
植木等の付き人をして学んだことが多いです。かつら係も衣装係も、一流が楽屋に来てくれたから。だからその仕事をつぶさに見ることができました。
とにかく、居ずまいを見て覚えるしかない。格好がいいな──と思い、それからその格好いいのはどうすればできるんだろうかと考える。
若い頃の僕は腹が出てないから、袴を穿くと『七五三』になってしまう。それで腹布団を作って衣装の下に入れて、袴を穿くことにしました。そうすると、腹で袴を穿けるんです」
《知らない!知らない!》《アンタはエラい!》など、数多くの流行語を生みだしてきた。近年はそうしたフレーズは「ギャグ」と呼ばれがちだが、小松はそれを否定する。