中国では新型コロナウイルスの感染者も減り、年に1度の重要会議である全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が2カ月半遅れで開催されるなど、ようやく感染も下火になってきたと思われていた。ところが、遼寧省や吉林省、黒竜江省などの東北部で、劇的に感染者が増えて、いまや東北3省で数万人以上の市民が隔離観察中だ。
その感染源は、吉林、遼寧の両省と国境を接していながら、「感染者ゼロ」と発表している北朝鮮である可能性が高いことが明らかになった。習近平指導部は北京で全人代を開催していたこともあり、クラスターを警戒し、東北3省の市民約1億人以上の移動禁止措置を決めていた。
中国メディアによると、中国東北部も他の都市同様、4月下旬には厳戒態勢が解かれて、通常の生活に戻っていた。しかし、5月上旬に吉林省北部の舒蘭(じょらん)市の病院でクラスターが発生した。市政府の対応が悪く瞬く間に感染が拡大し、人口60万人の同市は都市封鎖を余儀なくされた。市トップは感染拡大の責任を問われ解任された。
さらに、感染の「第2波」は遼寧省の省都で、東北部最大の都市である瀋陽市にも波及した。発端は瀋陽市の中心病院「463病院」(北部戦区空軍病院)の看護師が舒蘭市に出張していた知人男性から感染し、病院内でクラスターが起き、5月中旬に完全封鎖されたという。このため、7500人の市民が隔離された。
吉林省と遼寧省では複数の都市つなぐ列車とバスの運行が全面ストップしており、学校や店舗なども閉鎖されている。中国政府は舒蘭市の市民の感染源を明らかにしていないが、ネット上では「北朝鮮の貿易業者からだ」との書き込みもある。