毎年、11月下旬頃から流行が始まるインフルエンザ。今シーズンは2019年9月から患者の増加が目立ち始め、例年よりも流行が拡大することが心配されていた。しかし、ふたを開けてみると、インフルエンザ罹患者は昨シーズンより450万人も減った。これは過去12年間で最も少なく、昨シーズンと比べて、なんと半分以下だ。
その理由について、ちくさ病院内科医の近藤千種さんは「手洗い、うがい、マスクの影響が大きい」と話す。
「今年は暖冬で雨が多かったこともインフルエンザの流行を抑えた理由の1つですが、気候的な条件だけでは、ここまで減りません。もともと、『手洗い、うがい、マスク』は、新型コロナに限らず、あらゆる病気を防ぐ有効な手段です。その証拠に、花粉症の患者も今年は例年ほどひどくなかった。マスクの着用で吸い込む花粉は6分の1まで減らせるとされているので、そのおかげでしょう」(近藤さん・以下同)
“不要不急”の症状にもかかわらず、休日や夜間の外来を受診する、いわゆる「コンビニ受診」も減少したという。
「以前は、『仕事が忙しい』といった理由で、軽い風邪でも夜間の救急診療に来る人が少なくなかった。もちろん、軽症に見えても治療が必要な人もいますが、緊急の患者が待たされることもあったのです。
最近は、本当に治療が求められる人だけが病院へ来るようになって、私たち医師も効率よく対応できるようになりました」
日本は国民皆保険制度のおかげで、誰でもいつでも、3割以下という軽い負担で診察や処置を受けられる。しかし、それによって必要以上に病院を訪れる人もおり、医療費による国の財政の圧迫は社会問題になってきた。新型コロナによる国民の意識の変化は、そういった問題を解決する糸口になるかもしれない。
「自分の免疫力を高めるといった『対症療法』への意識や、病院はほかの病気に感染するリスクも高い場所であるという認識も高まりました。前もって電話で『受診した方がいいですか』と問い合わせる患者も増えています。新型コロナによる医療崩壊が叫ばれることで、医療資源が有限であり、一人ひとりの適切な行動が医療を守ると周知されたことは大きな変化です」
※女性セブン2020年6月11日号