その時代、時代の忘れられないヒット曲がある。由美かおるらと共に西野バレエ団五人娘と呼ばれ人気を集めた金井克子の『他人の関係』(1973年)は、その独特の振り付けとともに、人々の心に強く印象に残っている。自身のシングルで唯一オリコントップ10入りを果たしたこのヒット曲について、金井自身が振り返る。
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1962年にレコードデビューし、もともとバレリーナなので「歌うバレリーナ」と呼ばれました。でも歌手活動はもう大変。当時は演歌歌手でなくても地方キャンペーンが多く、レコード店の前でミカン箱に乗って歌い、レコードを売ってから有線放送に挨拶に行き、曲をかけてもらう。この繰り返し。思うようにバレエが踊れず、しかも歌はヒットしないでしょ。それが10年続き、心のバランスを崩して円形脱毛症になったくらいなの。踊りに専念したくてニューヨークに行き、向こうのバレエカンパニーで練習させてもらったりしました。
でも歌も忘れられず、これが最後と思って出したのが『他人の関係』。歌詞があまりにエロいので無表情で抑揚なく歌い、後に「指先確認」と呼ばれた人工的な振り付けにしました。当時CAさんが非常口を指で示すと、お客さんが「パッパッパヤッパ」と『他人の関係』のスキャット部分を歌い出したそうです(笑い)。
間もなく75歳を迎える今に至るまで歌と踊りを続け、『他人の関係』はステージで必ず歌います。お客様にも盛り上がっていただけます。この曲のおかげで私も人生をエンジョイさせてもらっていますよ。
恋人同士が毎回他人になったつもりで愛し合うという詞で、最後の〈私何度でも きっと引きもどす/もどしてみせる〉というフレーズに女の強さを感じます。熟年夫婦の皆さんも『他人の関係』にならえば新鮮な刺激を得られるんじゃないでしょうか(笑い)。
●かない・かつこ/1945年、中国天津生まれ。昨年秋、芸能界デビュー60周年単独ライブを大阪、東京で行なった。また中尾ミエ、前田美波里らとレビュー『カーテンコールをもう一度!』を続けている。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号