中国では2月から新型コロナウイルスの感染が拡大した影響で、都市部の建設工事が中断された。これにより、農村部の出稼ぎ労働者(農民工)や中小企業や個人商店の従業員らが失業し、中国全土で少なくとも5000万人もの失業者数があふれていることが分かった。6月以降には大学新卒者874万人を含む新卒者1000万人が社会に出る予定で、約6000万人の雇用の確保が急務だが、その実現は厳しい状況だ。
中国のインターネット上では「習近平主席は全人代で国民の生命と命を守ると言っている。今年の中国の国防予算は10年前に比べて倍増の1兆1898億元(約19兆8000億円)となっているのに、俺たちはこの3カ月給料が払われていない。国防予算を回すべきだ」などの批判も書き込まれている。
李克強首相は全国人民代表大会(全人代=国会)冒頭の政府活動報告で、雇用の安定について、「都市部の新規就業者数は900万人以上とする。失業率は6%前後とする」と宣言。さらに、失業者についても「新たな雇用を積極的に創出し、失業者の再就業を促す。大学新卒者は874万人に達し、大学と地元政府が持続的な就業機会を提供する。農民工が平等に就業できる政策も実施する」と約束した。
しかし、これについて欧州を拠点するBNPパリバ証券は「都市部に移動できない出稼ぎ労働者を考慮すると、失業者数は5000万人を超えている可能性がある。3月の実質失業率は12%に達したもようだ」との分析結果を明らかにしている。
これを裏付けるように、李首相は「今年は経済成長率の具体的な年間目標を提示しない」との異例の決定を明らかにした。これについて「新型コロナウイルスの感染と経済情勢は不確定性が非常に高く、予測困難な影響要因に直面しているためだ」として、今年の経済は低調に推移することをほのめかしている。