新型コロナの影響で、甚大な経済的被害を被っているのが飲食店業界だ。全国で緊急事態宣言は解除されたが、東京など一部地域では飲食店に対する休業要請は段階的緩和に留まり、以前の水準に戻るには時間がかかるとみられる。休業補償や無利子融資など公的支援はあるものの、個人や中小企業の経営店では持ちこたえられずに廃業を選ぶケースも少なくない。
そんななか、青息吐息の飲食業を支えようと、飲食業や農業・漁業などの生産者から有志が集まって始まったのが、「おいしいデモ」プロジェクトである。このプロジェクトでは、一般消費者に向けて、自分のお気に入りの店や行きつけの店を守ろうと呼びかけている。「#おいしいデモ」のハッシュタグをつけてSNSで店の写真をアップしたり、飲食店支援の署名やクラウドファンディングに参加したり、テイクアウト・デリバリー、お取り寄せを利用したり、これらの支援によって、なくなってしまうと自分が困る店を守ろうという趣旨の活動だ。
広島県尾道市でレモン農園「citrusfarms たてみち屋」を営む菅秀和さんは、生産者の立場でこのプロジェクトに賛同し、呼びかけ人として参加している。菅さんは6年前に独立してレモンやネーブルオレンジなど柑橘類の生産を始め、約300軒の飲食店と直接取引をしてきた。現状をこう語る。
「卸先の8割が東京都内の飲食店なので、影響は大きいです。レモンは保存が難しい果物なので果汁が主。昨年は4合ビン(720ml)で2000本のレモン果汁が完売したので、今年は3000本に生産量を増やしたのですが、GWに予定されていた食や酒のイベントがすべて中止になって1000本が宙に浮き、計2000本が卸先を失いました」
まさに非常事態である。菅氏はネットショップを開設し、これまで手がけていなかった一般消費者への販売を開始し、新たな販路の開拓にも乗り出している。だが、自身の事業については、決して悲観的ではない。
「意外にレモンは汎用性が高い果物で、需要はあります。私は前職で観光農園の企画営業をしていたので、柑橘類のさまざまな利用法をお客さんに提案できますし、持続化給付金などの政府の支援もあるので、それほど先行きに心配はしていません」(菅さん)
では、なぜ「おいしいデモ」プロジェクトに参加したのか。