芸能

松村和子のデビュー秘話 「野口五郎と共演したい!」で決心

8月には新曲を発売予定

 着物とパンタロンを組み合わせた衣装に、ギターのように三味線を弾きながら歌う新人歌手・松村和子は1980年に『帰ってこいよ』でデビューした。民謡歌手の娘がなぜ、演歌でデビューしたのか、松村がデビュー当時を振り返った。

 * * *
 私は(野口)五郎の大ファン。16歳の時、五郎に会えるチャンスだと民謡歌手のオーディションを受けたんです。北海道から上京して歌い終え、すぐに『ヤンヤン歌うスタジオ』(テレビ東京系)の収録を観に行きました。数週間後、ビクターから「民謡ではなく演歌を歌わないか」と連絡があり、悩んだ末、「デビューすれば五郎と共演できるかも」と邪な考えで決心しました。

 作曲家の一代のぼる先生がダミ声で歌う『帰ってこいよ』のデモテープを聴いた時、すごくショックを受けたんです。まだ10代でしたから、いつの時代の歌なんだと(笑い)。その後、ディレクターに頼まれ、北海道のカメラ屋さんで撮った写真を送りました。三味線を持ち、着物にパンタロンを組み合わせた姿でした。

 数か月経ち、アレンジされた曲のイントロを聞いた瞬間、「売れる」と確信しました。私が送った写真からヒントを得て、三味線の音を入れたそうです。東京でジャケット撮影をしたのですが、元の写真が採用されました。インパクトが強かったんですね。レコード大賞新人賞や紅白出場という夢も叶いましたが、一番嬉しかったのは『明星』で五郎と対談できたこと。先日も雑誌の切り抜きを見たのですが、後にも先にもあんな嬉しそうな顔はありません(笑い)。

『帰ってこいよ』は、いろんな広がり方をしていきました。ゴルフでOBを打った時に叫ばれたり、放牧場で牛を呼び戻すための音楽になったり……。これからも当時と同じキーで生涯歌い続けていきたい1曲です。

●まつむら・かずこ/1962年、北海道生まれ。90年代後半には、ものまね番組で野口五郎とデュエットして嗚咽。8月26日、新曲『望郷ながれ歌/明日咲く』発売予定。6月25日~7月4日に三重県「長島温泉 湯あみの島」での歌謡ショーに出演。

【1980年の出来事】
一億円拾得事件/王貞治が引退/モスクワ五輪ボイコット/山口百恵と三浦友和結婚/ジョン・レノン殺害/竹の子族ブーム/「ウォシュレット」発売

※週刊ポスト2020年6月12・19日号

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