コロナ禍の緊急事態宣言から明けてすぐ、その混乱に乗じて、山口組の分裂抗争が再燃した。5月30日、岡山市の歓楽街である北区田町で、神戸山口組池田組のナンバー2である前谷祐一郎若頭が銃撃されたのだ。銃撃したのは対立する六代目山口組の二次団体幹部で、即日逮捕された。この事件は抗争にどのような影響をもたらすのか。現場を取材したフリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。
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銃撃された前谷若頭は一命を取り留めた。が、22口径という小さな弾丸だったため貫通せず体内に残り、手術は大変だったという。22口径は、ヤクザにいわせれば「平手で頬を張った程度の音しかしない」らしく、「豆鉄砲と一緒や」(神戸山口組関係者)と明確に侮蔑される。実際、暴力団抗争では45口径のほか、殺傷能力の高い大口径の拳銃を選ぶのがセオリーである。
抗争事件では、襲撃した側・および親しい組織がヒットマンの勇猛を賛美し、襲撃を受けた側・同盟組織が犯行を過小評価する。事件直後、神戸山口組側は、22口径を使用した点について、「最初から殺害の意志が薄く、及び腰のため、ヤクザとしては半端な犯行」と拡散した。実際、刑は軽いだろう。現代の抗争事件では1人殺して無期懲役が相場だが、ターゲットが生存しているため、有期刑判決になると思われる。実行犯は52歳だから、そうなれば70前後で娑婆に出られる。六代目山口組は組織をあげて抗争のヒットマンを労い、報いる。山口組が存在する限り、功労者として人生は安泰である。
山口組の司令塔である高山清司若頭が出所した昨年来、六代目側は立て続けに暴力事件を仕掛けており、神戸側は防戦一方だ。とくにこの池田組は4年前の2016年5月31日、池田組の高木昇・前若頭が、六代目山口組弘道会傘下の組員によって殺害された事件の報複をしていない。どれだけ今回の襲撃が過小評価されても、池田組の“負債”はさらに増加したことになる。
「今のご時世、その日のうちとはいわないが、それでも、短期間で速やかに反撃するのがヤクザの喧嘩。たとえ幹部を殺せなくても返し(報複)の意思表示をしなくてはナメられる」(他団体幹部)