刃物でも銃弾でもない、「矢」の恐ろしさに列島が震撼した。6月4日、兵庫県宝塚市の閑静な住宅街で起きたボウガン(洋弓銃)による一家殺傷事件。殺人容疑で逮捕された野津英滉容疑者(23)は、自宅で母、祖母、弟、伯母に向けて次々に矢を発射。
「亡くなった母、祖母、弟はみなボウガンの矢が頭部を貫通していた。唯一の生存者となった伯母が近隣住人に助けを求めたことで容疑者確保に繋がった」(捜査関係者)
伯母は矢が刺さった状態で自宅を飛び出して助けを求めたと報じられており、救急車を呼んだ近隣住人の証言によれば、片側の耳の下あたりから反対側の耳にかけて、50cm近い矢が首を貫通した状態だったという。
「血はほとんど出ていなかったみたい」
近隣住人はそう話すが、なぜ伯母は意識を失わずに動けたのか。
救急医療に携わった経験を持つ医学博士の石蔵文信氏(大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授)が語る。
「頭部への一撃が致命傷になるのは、脳幹か大きな血管が損傷した時です。その2つが無事なら生存する可能性はある。今回のケースでいえば、耳付近は頸動脈が分岐しているので、奇跡的に矢が脳幹や血管を逸れて貫通したものと考えられます。少しでもずれていれば命を落としていた可能性が高い」
伯母は現在、病院で治療中だが、矢傷の処置は高い技術が必要だという。