SNSでの誹謗中傷などでクローズアップされている“言葉の暴力”。これに対し、「SNSに限らず、マスメディアや国会答弁、実生活でのハラスメントなど、言葉の暴力は私たちの周りに溢れている」と語るのは『屁理屈に負けない! 悪意ある言葉から身を守る方法』(扶桑社)を上梓した慶應丸の内シティキャンパスの桑畑幸博氏。
「だからこそ、今の時代には悪意の言葉から身を守る方法を知っておく必要がある」と続ける桑畑氏が教える、論理学の観点から言葉の暴力を看破する方法とは?
拡大解釈で言い掛かりをつける「わら人形論法」
言葉の暴力から身を守るには、「まず、あなたを攻撃してくる悪意の言葉が、いかに姑息で卑怯なテクニックを駆使した、相手にする価値もない言葉であるかを知るべき」と桑畑氏。その姑息なテクニックが「屁理屈」と呼ばれるものだ。
「屁理屈には実にさまざまな種類があり、知っておかないと気付かずに言い返せなかったり、傷ついてしまうリスクがあります。例えば、自営業者が『コロナ禍で生活が苦しい』と呟いただけで、『みんな頑張っているのに、自分勝手な奴!』と“自粛警察”が飛んできたりする。当人は経済的に苦しいという事実を伝えただけなのに、まるで自粛解除を要求する非国民のような扱いをする。このように誰かの言動を勝手に拡大解釈して、言ってもいないことを的にして攻撃する方法を『わら人形論法』と呼びます」
拡大解釈により架空のわら人形をこしらえ、それをサンドバックにすることで優位に立とうとする実に卑怯なやり口だ。冷静に考えるとまったく見当違いな主張だが、相手がわら人形論法を使っていると気付かなければ、言いくるめられてしまう。
「さらに、この『わら人形論法』と大義名分に訴えかける『同情論証』を組み合わせると、非常に厄介な屁理屈が完成します。同情論証とは『差別をなくすために』とか『会社のためを思って』といった反論しにくい大義名分を掲げた上で暴論を展開するテクニックですが、『さすがにそれは乱暴な主張だ』と反論されたら、『差別を黙認する差別主義者だ!』『会社のことを考えない反乱分子だ!』とわら人形論法で攻撃する。誰にでもできる簡単かつ凶悪な言葉の暴力です」