愛知県の大村秀章知事に対する解職請求(リコール)運動について、キッパリと賛意を示した大阪府の吉村洋文知事。2大都市のトップ同士がいがみあう前代未聞の騒動が勃発したが、その背景には大阪と名古屋の深い因縁があった。
大阪と名古屋の根深い対立の背景には歴史的な経緯もある。カギを握るのは、あの偉人だ。本誌・週刊ポスト『逆説の日本史』シリーズを連載する名古屋市出身の作家・井沢元彦氏が指摘する。
「大阪を大きく発展させたのは豊臣秀吉です。大坂城を築いたのも秀吉で、大阪人は二言目には『太閤さん』と自慢しますが、その秀吉の出身は名古屋。だからこそ、『誰が大阪を作ったと思ってるんだ』という感覚が名古屋人にはある。
そもそも秀吉は名古屋弁を使っていたとも言われていますからね。そうした背景が、大阪に対する『上から目線』に繋がってしまうのです」
半面、名古屋には劣等感もあるという。
「現在、世間一般の意識としては名古屋より大阪のほうが大きな都市でしょう。名古屋人には、『俺たちの先祖が大阪を作って大きくしたのに、その恩を忘れやがって』という複雑な思いがある。
これはイギリスとアメリカの関係に似ています。イギリスがアメリカを作ったのに、いまではアメリカのほうが巨大になり、世界への影響力も強い。名古屋人の感情もこれと同じで、優越感と嫉妬が入り混じっているのです」(井沢氏)