誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、一攫千金が狙えるWIN5の醍醐味と危うさについてお届けする。
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いまだにWIN5に手を出そうとしない知人にその醍醐味を力説したら、思わぬ答えが返ってきた。
「大きいのを的中したらしたで問題があるよ。通常の馬券とは違って、履歴が残るからね」
税務署に目をつけられると言うのだ!
5000万、1億の高額払い戻しが出た場合、当選者を教えろという国税局の要請に、銀行もJRAも抗えないのではないか、と。当欄で自慢げに的中ルポなどを披露すれば盗人に追い銭(?)となる。
望むところだ! 究極の心配事である。ぜひともそんなゴージャスでスリリングな情況に立ち会って、嬉しい悲鳴をあげたい。そしてへーと感心もする。なるほど、本気で一攫千金を狙うなら、税金問題は看過できないわけだ。WIN5の売り上げがイマイチ伸び悩んでいるのも、そのへんが理由という分析もあり、それでキャッシュレス投票(UMACA)が始まったという説さえある。
それでも、私にとってWIN5は面白い。
1着馬を選ぶというのがいい。堅実とか軽視禁物とか手広くとか、そんな言葉遊びじゃなくて勝ち切る馬。普段のレース予想で忘れかけていた競馬の王道感を再認識させられるから。
前回、買い目が必然的に増えるから「金持ちの馬券」と書いた。しかし1頭必中を5R続けられれば究極のハイリターン馬券にもなる。