一度でも「B型肝炎」と診断された方は要チェック
まず、下のチェックリストを見ていただきたい。ひとつでも当てはまる項目のある人は、B型肝炎に感染した人に対する「給付金」を国から受け取ることができるかもしれないので、ぜひその仕組みについて知っておく必要があるだろう。特に2番目の「健康診断や献血でB型肝炎と言われたことがある」人は、一定の条件を満たせば給付金をもらえる可能性が高いので、要チェックだ。どんな条件を満たせばいくら給付金がもらえるのか、より詳しく確認したい場合は、B型肝炎給付金診断ツールを試してみることもおすすめしたい。
B型肝炎給付金チェックリスト
給付金の額は、以下の通りだ。
・B型肝炎の病状が悪化し不幸にしてなくなった場合や肝がん(肝臓がん)、重度の肝硬変となっている場合は最大3600万円(発症後20年以上経過している人は900万円)
・軽度の肝硬変の場合は最大2500万円(発症後20年以上経過している人は、現在も治療を受けていれば600万円、治癒している人は300万円)
・慢性B型肝炎の場合は最大1250万円(発症後20年以上経過している人は、現在も治療を受けていれば300万円、治癒している人は150万円)
・無症候性キャリアの場合は原則50万円+血液検査の定期検査費用など
上記のように、無症状でも50万円もらうことができ、その後も血液検査が無料になる可能性があるのだ。ただし、請求期限が「2022年1月12日」となっていて、期限を過ぎると請求できなくなってしまうので、「いつか手続きを考えてみよう」と、のんびり構えてもいられない。
そもそもB型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)により発症する感染症の肝臓病のこと。主に幼少期の集団予防接種やツベルクリン検査などで注射器が使い回されていたことが原因で感染するとされる。事実、過去には全国でB型肝炎ウイルスの集団感染が広がり、平成元年以降は国の責任を問う「B型肝炎訴訟」が相次いで提訴されてきた。ニュースなどで見聞きして知っている人もいるだろう。
そして、国はついに過失を認め、平成24年1月に「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が施行。B型肝炎に感染した人への給付金制度や認定要件、国への請求期限などが法律によって定められることになったという経緯がある。
給付金が受け取れる対象者は全国で40万人ほどいるという
現在、給付金が受け取る可能性がある対象者は、全国におよそ40万人いるとみられているが、実際に訴訟をした人は10分の1の4万人程度に過ぎない。これまで健康診断などでB型肝炎と診断された人の多くは、この給付金制度自体を知らなかったり、仮に知っていても自分が支給の対象者なのかわからなかったりする上に、国を相手取った「訴訟」という言葉から難しそうだと尻込みする人も少なくなかったという。そのため、手続きの件数がなかなか増えない状況だった。
しかし、実際には訴訟といっても一般的な裁判と異なり、B型肝炎の感染原因を認定してもらう手続きで勝ち負けを争うものではなく、裁判そのものも簡素化されているという。
では、具体的にどんな人が給付金をもらえるのか。これまでB型肝炎訴訟で1万3000件以上の提訴実績があるベリーベスト法律事務所の、巽周平弁護士が解説する。
「過去に一度でもB型肝炎だと言われたことのある人は、まずは請求できる可能性を考えてみるべきだと思います。
B型肝炎の感染経路には『水平感染』と『垂直感染』があります。このうち、水平感染で代表的なのが、小学校低学年の頃までに受けた集団予防接種における注射器の使い回しでB型肝炎ウイルスをうつされてしまった人たちです。7歳ごろまでは体の免疫力が未熟であるため、ウイルスが体内から排除されずに持続的に感染した状態となります。この場合、国に対して給付金請求をすることができます。
一方、垂直感染とは生まれた時にお母さまから感染してしまったお子さまが対象となります。そもそもお母さまが予防接種でB型肝炎に感染した可能性があり、そうであればお母さまも当然給付金請求をすることができますが、お子さまも給付金請求できる可能性があるのです。
また、ご家族の中にB型肝炎であると言われたことがある方がいる場合や、B型肝炎でお亡くなりになった方がいる場合も、給付金請求を一度検討してみるべきだと思います」
給付金がもらえる可能性については、前出のB型肝炎給付金診断ツールでも確認することができる。
給付金の手続きで、いちばん気になるのが、資料収集などの手続きが大変なのではないかということだろう。そんなときに心強い味方になってくれるのが弁護士の存在だ。前出の巽弁護士が語る。
「弁護士事務所に依頼していただければ、給付金請求手続きの大部分を弁護士が行います。血液検査を受けていただく必要はありますが、その後のカルテや戸籍などの必要書類の収集は、弁護士が率先して行います。
また、書類作成はもちろん、裁判所への出廷も弁護士がしますので、お客様は一度も裁判所に行く必要はありません。ご相談もお電話ですることができますので、あまり手続きを難しく考えずにお任せいただければと思います」
資料収集や裁判所への出廷など、手続きの多くは平日の昼間に行われることが多いため、仕事や家事が忙しい人にとって負担となる。そうした手間をかけずに給付金をもらうには、弁護士が頼りになるというわけだ。
だが、裁判所に提出する書類の収集には予想外に時間がかかることもある。前述のように給付金の請求期限は2022年1月12日と、あと2年を切っているので、早めに準備をしておくに越したことはないだろう。