脳卒中の症状は、脳が障害を受けた場所によって変わるが、特に多いのは、体の片側のしびれや脱力だ。聖マリアンナ医科大学東横病院脳卒中センター副院長・脳卒中センター長の植田敏浩さんはこう言う。
「専門的にはしびれは感覚障害、脱力は運動障害といいます。左右の手足や顔面、また体の片側全体に起こることもあります。なぜ片側かというと、大脳が左右2つに分かれているためです。障害は左右のどちらかに起こるため、麻痺も体の片側に出ることが多いというわけです」(植田さん・以下同)
感覚障害や運動障害と同時に、めまいやふらつきが起こることもあるという。
また、ろれつが回らず、しゃべりにくくなったり、言いたいことが言えなくなる、相手の言葉が理解できなくなる、ということもある。これは言語障害と言う。
「話すことに関係のある脳神経がダメージを受けると、口の中が麻痺して発声や発音ができなくなります。また大脳の言語中枢が損傷すると、言いたいことが言えなくなったり、相手の言葉が理解できず、つじつまの合わない会話になってしまいます」
片目が見えなくなったり、ものが二重に見える、視力や視野の障害は、脳の視覚を司る場所がダメージを受けたときに起こるという。
「ものが二重に見えるのは『複視』といい、眼球を動かす神経や脳幹に異常があったときに起こります」
◆激しく痛みを伴うのはくも膜下出血のみ
脳梗塞や脳出血では頭痛の症状はない。しかし、くも膜下出血では、激しい頭痛や嘔吐が起こるので注意が必要だ。
「出血した瞬間に脳内の圧力が高まり、突発的な頭痛を引き起こします。出血が少なければ軽い頭痛の場合もありますが、いずれにしても早急に診断、治療が必要です」
◆早急の治療が回復の肝になる
脳卒中の症状が現れても短時間(通常は1時間以内)で消え、画像診断では脳梗塞の病変が認められないことがある。これは「一過性脳虚血発作」と呼ばれ、小さな血栓が一時的に血管を詰まらせたものの、なんらかの理由で再び流れ出し、回復するケースだ。放置する人が多いが、発作の前兆であることが多いので、侮ってはいけない。
一方で、一過性の意識障害やめまい、慢性的なしびれ・頭痛などは、脳卒中ではなく、別の病気の可能性が高い。
いずれにせよ、脳卒中が疑われるこれらの症状が出たら、できるだけ早く専門病院で検査を受けることが大切だ。病院ではCTやMRI検査で脳の画像を撮影・診断し、症状に合わせた治療を行う。
「脳梗塞の場合、血管から血栓を回収するカテーテル治療をすれば回復が見込めます。通常は発症6時間以内が有効ですが、画像所見によっては24時間以内でも効果がある場合もあります。
また、tPAという血栓を溶かす薬剤の点滴をすることもあります。脳出血では血圧を下げる治療を行いますが、出血が多い場合は血腫を除去する手術をすることも。くも膜下出血の場合、動脈瘤の再出血を防ぐ手術を行います」
脳卒中の危険因子が多い人は、いざというときにすぐ行けるよう、カテーテル治療やtPA治療などを行っている病院の場所を調べておくと安心だ。また、脳ドックを受けるのもおすすめ。
「脳ドックでは、症状がなくても、動脈硬化を起こして血管が細くなっていることなどがわかります。そういう人は、予防のためのリスク管理をした方がいいでしょう」
日頃の備えが、いざというときの助けになる。
※女性セブン2020年7月2日号