新型コロナウイルス感染を避けるための外出自粛で、高齢者の中には健康に不安を抱える人が増えている。健康政策・スポーツ医学を専門とする筑波大学教授の久野譜也さんは、運動不足の高齢者にはまず筋トレとウオーキングが必要だと提唱している。
さらに、コロナ禍を元気に乗り越え、寝たきりにならずに人生を生き抜くために、久野さんがもう1つ掲げるのが食事だ。
「60代までは生活習慣病対策としてカロリー制限を心掛ける人が多いと思います。でも、70才以降はたくさん食べる方がいい。もちろん暴飲暴食はいけませんが、高齢になってきたら“ちょいデブ”くらいが健康長寿ということもわかっています」
筋トレで筋肉量を増やすためには、材料となるたんぱく質の摂取が大切。足りないと効率よく筋肉が増えず、体力も維持できないという。
「特に動物性たんぱく質をしっかり摂ってほしい。なかでも豚肉は、アルブミンという長寿の秘訣といわれる成分が豊富なのでおすすめです。多様な栄養素をバランスよく摂ることは大前提ですが、同時に“たんぱく質を摂らないデメリット”が大きいことを覚えておいてほしい」
そして重要なのは筋トレ、ウオーキング、食事の3つとも疎かにしないこと。
「“食事だけはこだわっている”“筋トレやウオーキングだけやっている”という人がいますが、意外に効果は出ません。この3つの相互作用が大切。三位一体なのです」
新型コロナの状況はまだまだ予断を許さないが、熱中症シーズンの先にあるコロナ流行の第2波、第3波を見据えて、老親を見守る世代に久野さんからメッセージがある。
「高齢者にとって交流の大切さは働く世代以上に切実です。孤独は生活意欲や認知機能を低下させ、寝たきりになるリスクも増加させます。ぜひ運動と食事で、外に出て交流を楽しめる体づくりを。そして家族間でも交流を。顔を見て健康状態を推察できるリモート通話もいいですね。秋に再び外出自粛となれば、同じダメージがあると考えて、親御さんとのリモート通信の環境づくりを、いまから準備してはいかがでしょう」
※女性セブン2020年7月2日号