7年連続で人口減少率トップの秋田県を舞台に、人口減少、少子高齢化を象徴するようなニュースが話題となっている。高校バスケの名門・県立能代工業高校の名前が消滅の危機に立たされているというのだ。名門校の校名消滅の背景にある人口減少の実態と、“あきた創生”に向けた県の取り組みをジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
* * *
「秋田の能代工業 統合で校名変更へ」──。6月上旬、新聞にショッキングなニュースが掲載された。
日本人として初めて本場米国のNBAでプレーした田臥勇太選手ら錚々たる名選手を輩出した秋田県立能代工業高校。2021年4月から県立能代西高校と統合することが決まっているが、県教育庁が3月に決めた新たな学校名は「能代科学技術高校」。県立高校設置条例の改正案が6月県議会に出され、可決されれば7月7日に正式決定する。その時点で「能代工」の名目が消えてしまうというわけだ。
校名変更をめぐってはバスケファンや県内の住民らが、能代工の名前存続、校名変更再考を求める署名活動を展開。あわせて9000筆を超える署名が集まり、嘆願書、陳情書として県議会に提出された。
能代工が統合に追い込まれたのは、少子化による生徒数減少が原因だ。少子高齢化、人口減は地方共通の課題だが、秋田県はより深刻だ。
総務省が4月に発表した2019年10月1日時点の人口推計によると、秋田県の人口は96万6000人。前年からの減少率は1.48%となり、7年連続で全国最高となった。厚労省の人口動態統計によると、2019年の秋田県の出生数は過去最少の4696人で初の5000人割れ。出生数は13年連続の減少だ。
秋田県の人口は1956年の約135万人をピークに減り始め、1970年代後半に一時持ち直したものの、その後は減少の一途。2017年にはついに100万人の大台を割り込んでしまった。
少子高齢化が全国でもっとも進み、働き手となる人口が少ない。そんな厳しい状況に置かれているのだ。